インターネットコンサルティング
ターゲット・マーケティング社
代表: ジム・スターン
設立: 1994年
<個人でも世界を相手に商売ができる>
「個人でも、世界を相手に商売できる--それがインターネットの威力です」というのは、南カリフォルニアのサンタバーバラで、インターネットのコンサルティングを行なうジム・スターン氏だ。彼自身、サンタバーバラの自宅で、全米や世界に散らばるクライアントを相手に仕事をしている。
アメリカでは、今年に入って、インターネットのコンサルタントが急速に増えたが、昨秋、開業したスターン氏は、パイオニアの一人。また、多くのコンサルタントが技術屋であり、技術面に焦点をあてるのとは異なり、スターン氏はコンピューター業界での営業・マーケティング経験を生かし、「インターネットをマーケティングにどう利用するか」という点に焦点を絞っている。
スターン氏の仕事は、具体的に、既にウエブサイト(ホームページというのは、その最初のページ)を設けている企業のサイトをチェックし、それをよりよいものにするにはどうすればよいかをアドバイスすること。また、これからウエブサイトを設けたいという企業には、成功するための目標と戦略を開発することだ。
「ウエブサイトを設ける前に、目標と戦略を立てることが必至です。ウエブサイトを設けるということは、単にサイトを入手するのではなく、プロセスであり、管理が必要なのです。つまり、インターネットによって利益を得るには、マーケティング、営業、顧客サービス、経営陣など組織全体の協力が必要だということです」
しかし、実際には、目的もなしに、皆がやるからという理由でウエブサイトを設ける企業がほとんどだという。
「ウエブサイトを設ける目標には、いくつか考えられますが、第一に企業のイメージアップがあります。インターネット上に進出することによって、“進んだ企業”いうイメージを顧客に与えられる。反対に、進出しなければ、時代に乗り遅れた古い企業と見なされかねないでしょう」
さらに、「時代の最先端をいく企業というイメージを築けば、社員の採用にも効果がある。もちろん、インターネット上で求人広告も出せます」
また、多くの企業がインターネットを顧客サービスに利用しているという。「頻繁に聞かれる質問に対する答えをウエブサイトに出しておけば、顧客サービス係の仕事が減るし、お客も待たされることなく、好きなときに回答が得られる」
たとえば、ある企業がコンピューター250台の購入を考えていたときのことだ。「担当者は、メーカー二社に絞りこんで、どちらにすべきか検討していました。そこで、両社のウエブサイトを訪れたのですが、価格や保証以外に、夜間にコンピューターを設置する場合のために、24時間のオンラインの顧客サービスはあるかどうかというようなことが選択の鍵になったのです」インターネットがあれば、無人の24時間顧客サービスも可能というわけだ。
<オンラインでの製品販売が魅力>
しかし、何といっても、インターネットの最大の魅力は、オンラインによる製品の販売だろう。「これは、特に販売サイクルを縮めるという点でメリットがあります。消費者が製品の購入を決めるにあたり、まず必要とするのはその製品に関する情報です。そうした情報をオンラインで流せば、消費者は24時間、好きなときにそれが入手できる。いちいちカタログやパンフレットを郵便で送る時間もコストも省ける。また、製品によっては、オンラインでダウンロードして、実際に試してみることもできるわけです」
さらに、オンラインで製品の仕様、配達や支払方法を選べるようにすれば、瞬時にして販売が成立し得る。スターン氏の言葉を借りれば、「寝ている間に売上を伸ばすことが可能」ということになる。
といっても、何でもインターネットで売ればいいというわけではなさそうだ。「インターネット上での販売に適しているのは、顧客がオンラインで購入することに抵抗を示さない製品。具体的には、本、CD、ソフトウエアなど。本であれば、試しに一章読むことができるし、CDであれば、曲をダウンロードして、聞いてみることができる。ソフトウエアも、トライアル・バージョンをダウンロードして、実際に使ってみることができる」
スターン氏のクライアントは、主に大企業、特にハイテクや通信産業が多いそうだ。というのは、「今のところ、インターネットを使いこなせ、そのマーケティング力の価値を理解しているのは、こうした業種だから」 しかし、次第に製造業、小売業、出版業にも広がりつつあるという。
コンサルティング料は、先方に出向かなくてもよい場合は、時間あたり125ドル、先方に出向く場合は、一日2000ドルだそうだ。
スターン氏は、コンサルティング以外に全米各地でセミナーも行なっている。「誰もがインターネット、インターネットと騒いでいたが、実際にその利用法を示す書物もなければ、セミナーもなかった」ため、ユーザー教育の必要性を感じ、昨年9月に業界初のセミナーを企画した。このセミナーは、全米8都市で「インターネットによるマーケティング」というテーマで、企業のマーケティング担当者向けに行なわれた。
その後も、スターン氏は、毎月、「インターネット・ワールド」「ウエブ・ワールド」などの会議で講演を行なっている。9月には、ロンドンの「インターコネクト'95」、トロントの「ウエブ・ワールド」で講演を行なったところだ。
10月には、『ワールド・ワイド・ウエブ・マーケティング』という著書の出版も予定している。インターネット関連の書籍で、技術面ではなく、マーケティングの観点から書かれたものは、同書が初めてだということだ。
アメリカには、登録されたドメインが8万あるといわれている。4年前に、ドメインを持っていたフォーチュン500企業の割合は75%、それが、現在では、100%に達している。しかし、「現存する企業の数を考えれば、インターネット上に進出している企業は、まだまだ少ないと言えるでしょう」
インターネットの将来に関して、スターン氏はこう語る。
「ここ3年ほどで、どの企業もウエブサイトを持つようになるでしょう。電話やファックス、ボイスメールのように、インターネットを使ってビジネスをすることが当たり前となるのです。これから一番伸びるのは、ボイスビデオだと思いますが、5年たてば、顧客サービス係の姿がモニターに映し出され、お客の質問に答えるといったことが現実になるのではないでしょうか」
取材・文-----有元美津世
ベンチャーリンク誌95年11月号に掲載
Copyright GlobalLINKTM 1995
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