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有元美津世のアメリカ西海岸便り

浸透するインターネット・ビジネス
ついにはオンライン確定申告


 アメリカのECの日常生活への浸透はかなりのもので、最近は、たいていのことがオンラインでできるようになった。

 まずは、家の購入の際に、物件探しにインターネットが大いに役立った。希望条件にもとづいて、検索ができ、写真も見れて、地図も印刷できる。希望の条件を登録しておけば、定期的に条件にあった物件を電子メールで通知してくれるサービスもある。私の場合、インターネットで探した物件を不動産業者に渡して、物件を見せてもらっていた。正直言って、もはや不動産業者は必要ないのである。

 不動産業者を通さず、持ち家を独自で売却したい人向けのサイト(www.owners.com)もある。この手の物件は、不動産業者のデータベースには入っておらず、探すには自分で走り回って探すしかないため、インターネットのおかげで非常に便利になった。 また、住宅ローンの申請などもオンラインでできるようになっている。家の改装にあたっては、塗装業者などを紹介してくれるサイト(マッチングビジネス)もある。

 自動車の購入にもインターネットを利用した。日本でも有名になったオートバイテル(www.autobytel.com)を使ったが、非常に満足の行くサービスで、今後、ニ度と直接ディーラーに行って車を買うことはないだろう。

 オートバイテルのサイトで希望の車種や仕様を入力し、購入リクエストを送付すると、48時間以内に最寄のディーラーから電話がある。そこで、価格や条件を交渉する。

 購入リクエストを送付する前に、サイトにあるさまざまなリサーチツールを使って、卸価格からリコール率まで徹底的に調査をし、試乗も終了している(試乗は別のディーラーに出向いて行なった)。また、新聞広告などを見て、他のディーラーの価格などもチェックしてあったため、ディーラーが出せる最低価格ラインは把握していた。

 価格や条件に合意した後で、販売契約書締結のためにディーラーに出向いた。オートバイテルでは、加盟ディーラーにオートバイテルの講習を受けたオートバイテル専門のマネージャーを置くことを義務付けている。オートバイテルでは、このポストには、従来の自動車セールスマンはもっとも不適切とし、小売業、特に自動車業界での経験がないこと、マーケティング経験があること、インターネットが使いこなせることを採用条件としている。

 このディーラーのオートバイテル専門マネージャーにも、以前は何をしていたのか聞いてみたところ、農産物の配送業を経営していたという。ディーラーに就職した当時、車のことはまったく知らなかったそうだ。彼の話では、「オートウエブ(www.autoweb.com)やカーポイント(carpoint.msn.com)など複数の自動車販売サイトと提携しているが、オートバイテルの品質管理が一番優れている」とのことだった。

 ヤクザまがいの自動車セールスマンと駆け引きをしなくてよいというメリットのほか、オートバイテル利用者には、アクセサリーの特別価格や、本当ならクーリングオフ期間のない契約書にも3日間のキャンセル期間があるなどの特典がある。

 オートバイテルのサイトでは、自動車ローンや自動車保険の申し込みもオンラインでできる。私も、現在、購入している自動車保険よりも安いのはないかと、インターネットで物色した。保険関連サイトは、オンラインで購入までできるところはほとんどなく、たいてい個人データや希望条件などをオンラインで記入して、保険代理店から電話やファックスで見積りが届くという形が多い。

 画期的なのは、税金の支払いまでもがオンラインでできるようになったことだ。アメリカでは、コンピューターソフトを利用して、自分で申告書を作成する人たちが増えている。こうしたソフトでは、会計ソフトから直接データをダウンロードできるので、いちいち数字を入力し直す必要がない。また、前年もソフトを利用して申告書を作成した場合、前年度のデータも自動的に入力される。

 私も、昨年こうしたソフトを利用したので、今年度はIRS(歳入庁)からe-fileの誘いが来た。IRSでは、数年前からe-fileというコンピューターによるオンライン申請を受け付けている。つまり、確定申告ソフトで作成した申請書をそのまま電子的にIRSに送付できるのだ。

 昨年、オンラインで申告した人の数は94万2000人にのぼり、95年の1000人に比べ940倍に増加した。給与所得者であるかいなかにかかわらず、国民全員が確定申告をしなければならないアメリカでは、確定申告の処理は大変な作業である。郵送された申告書は、IRS職員がデータを入力し直さなければならない。データをオンラインでもらえれば、IRSにとっても、大幅なコスト削減となる。IRSでは、2007年までに納税者の8割をe-fileによる申告に転換する計画だ。

 e-fileを利用する人の多くが、IRSより返金を受ける人たちだが、追加の税金を支払わなければならない人は、デビットカードやクレジットカードで支払うこともできる。ただし、クレジットカードを利用した場合は、取扱業者によって平均2.5%の手数料が徴収される。税金がオンラインで支払えるなんて、オンライン取引もここまで来たかと感心してしまった。

 確定申告書の簡略書式の利用者(源泉徴収のみで収入が一定限度内で申告内容の簡単な人)は、電話による申告もできる。金額などはすべてプッシュホンで入力する。IRSの自動化はかなり進んでいるようだ。

 古い体質の日本の役所がオンライン化する日も、いつか来るのだろうか。


有元美津世/N・O誌1999年7月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1999

Revised 7/17/99

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