食料雑貨からリサイクルまで
ホームショッピング最先端
テクノロジーの発達により、通販、TVショッピング、オンラインショッピングなど、消費者は自宅にいながら買物ができるようになった。売り手にとっては、消費者をいかに店頭に引き付けるかよりも、いかに、直接、消費者のもとに情報と商品を届けるかが鍵となりつつある。特にメーカーは、小売店や流通経路に頼ることのない消費者直販ルートの開拓に知恵を絞っている。
実際、アメリカでは、過去9年で、小売店への客足は4割減少、家庭内での商品やサービスの購入は3割増加した。ホームショッピングは、毎日の食料品購入にも広まっており、ビル・ゲイツは、2005年までに食料品販売の3分の1が電子的に行われると予測しているほどあ。
年間5000億ドルにのぼるといわれるアメリカ人の毎週の買物の95%が、食料雑貨品などの消費財と、ドライクリーニングやレンタルビデオなどの更新品から成るという。そうした買物をする暇がないという多忙な人のために、食料雑貨品の配達から、ドライ・クリーニング、レンタルビデオの貸出返却、郵便、写真現像、空ビン・空缶のリサイクルまでを引き受ける会社がある。「ストリームラインを使えば、週に3時間節約できる」と自負するのは、 ボストン郊外にあるストリームライン社会長兼最高責任者のティモシー・デメロ氏だ。
「ストリームラインが提供するのは、単なる食料雑貨品の配達ではなく、多忙な生活において、さらなるストレス要因となるくり返し行なわれる、わずらわしい買物などの用事からの解放なのです。消費者が必要な品物とサービスを最も便利な形で入手できるようにする--総合ライフスタイル・ソルーションを提供しているのです」
デメロ会長は、投資ブローカーを経て、25才のときに、株売買のシミュレーション・インターラクティブ製品を製作する会社を設立。しかし、以前から、利便性を提供するビジネスの成長性に魅せられており、92年にその会社を売却。翌年、ストリームラインの設立に向け、45000ドルの自己資金を投入した。94年には、170万ドルを投資家から集め、市場でそのコンセプトをテストするため、ボストン郊外で約60世帯を対象に、モデルを設立し、1年半、試験運営を行なった。
資金を使い果たすと今度は、アンダーソン・コンサルティング会社に、ストリームラインの顧客とモデルを用いて、ホームショッピング調査を行なうことを提案。アンダーソン社は、家庭直販市場に興味を持つコカコーラやP&Gなどの大手消費者製品メーカー9社を集め、50万ドルの資金を入手した。
この調査により、今から10年後、消費者直売は、8-12%の市場シェアを占め、600-850億ドル産業に成長するということがわかった。これは、倉庫型会員制ディスカウント店とスーパーストアを足した産業よりも大きい。
そして同社は、96年、56000平方フィートの配送センター、「消費者リソースセンター」をオープンした。
商品の配達は、週に1ー2回。夜中までに、電話、ファックス、またはオンラインで注文すれば、翌日に配達される。料金は、入会金39ドルと月々30ドルのみ。
同社では、まずお客の家にある食料品のバーコードをスキャンし、個々の家庭の買物リストを作成。次に、特許取得済みの冷蔵庫と冷凍庫、棚を組み合わせたストリームライン・ボックスを家のガレージまたは地下室に設置する。ストリームライン・ボックスは、暗証コードで開閉でき、顧客が配達時に家にいる必要はない。
現在の顧客数は、215軒。損益分岐点は、顧客数1700であり、97年末までに、顧客数2000、売上750万ドルを目指している。現存の顧客は、52週間のうち47週注文し(注文率87%)、年に平均6000ドルを消費するという。
同社では、DMに加え、ホームページを使って商品や特売の宣伝を行なう。 オンライン注文のページは、顧客しかアクセスできず、たとえば、乳児のいる家庭には紙オムツの宣伝が現われるといったように、宣伝愛用は、個々の家庭に応じ、カスタマイズされる。
商品は、直接、メーカーや卸業者から購入。平均的なスーパーでは、1ドルの売上に対し、利益は1セントと言われるが、ストリームラインでは6セント。また、コスト面でも、スーパーでは、平方フィートあたり20ドルの小売スペースが必要だが、ストリームラインでは、平方フィートあたり6.50ドルの倉庫スペースですむ。
アメリカには、すでに、シカゴのピーポッドのようにインターネット上にバーチャル・スーパーを構え、消費者に食料品などの配達を行なっている会社がいくつかあるが、ストリームラインが、こうした会社と異なる点は、配達のスケジュールが週ごとと固定されている点だ。つまり、同社のサービスは、大量買い出し用であり、ちょっとソースが切れたから、コンビニへといった急の買物用ではない。しかし、同時に、こうした配達システムが変動費の削減につながっている。「オンデマンドのバーチャル・スーパーでは、変動費が高く、供給にお金がかかる。これでは利益はあげられない」
ストリームラインの75%に対し、ピーポッドの注文率は50%。このビジネスでは、注文率50%以下のお客は、利益にならない。また、顧客の入れ替わりや平均注文量も利益に大きな影響を与える。
大きな需要が確認されているホーム・デリバリー業界だが、いかに利益をあげるかが、今も、最大の課題となっている。
ストリームラインでは、次に、ワシントンDCに進出を予定している。郊外型家族が多いことと、配達効率のため、家がある程度密集していることが地域を選定する上でカギとなる。
また、企業の社員向け福利厚生としてのサービス提供もテスト中である。将来的には、航空券、映画のチケット、芝生手入れ、家具のクリーニングまで、あらゆる商品とサービスを提供する予定だ。
現在、技術ライセンスを通じ、全米に8つの会社があるが、7年後には、全米に200のセンターを設け、100万人の顧客を得ることが目標だ。