米国ニュービジネス発掘−16−

環境保護・省エネ製品カタログ販売
株式公開はオンラインで


会社名:Real Goods Corporation
設 立:1986年
代 表: 
John Schaeffer
売上高:1840万ドル
従業員:100人
URLhttp://www.realgoods.com

 昨年、京都で開かれた地球温暖化会議では、二酸化炭素排出削減目標値0%を掲げ、各国と対立したアメリカだが、8年前から、顧客とともに二酸化炭素排出削減キャンペーンを行ってきた企業が、サンフランシスコの180キロ北、ユカイアという小さな町にある。リアルグッズ社では、省エネ製品、太陽光発電パネル、節水機器など、750以上の業者から仕入れた3500以上の環境に優しい製品を小売店と通販カタログを通じて販売している。
 同社では、90年、同社の省エネ製品の購入を通じ、10億ポンドの二酸化炭素排出削減目標を顧客に呼びかけ、昨年までに目標の94%である約9.4億ポンドの排出防止を達成している。

 本社の近く、ホープランドにある本店には、太陽光発電パネルと風力発電機で電力を自給するソーラーリビングセンターがある。ショールームは、わら梱などすべて再生資源で造られており、またソーラーエネルギーなどの再生エネルギー技術が陳列され、訪問者がその仕組みを見られるようになっている。
オープンした96年には、15万人以上の訪問者があり、140万ドル以上の売上をあげた。同社では、年間600万部のカタログを作成するが、注文率は約2%である。「12万人の顧客を得るために伐採している木の数を考えると、リビングセンターの方がより効率的、環境保護的、教育的であり、会社の理念に合う」とジョン・シェイファー社長は語る。

 「当社で最も重要な製品は、お客さまに伝授する知識」というリアルグッズでは、ソーラーリビング研究所を設立し、わらを利用した家屋建設、再生エネルギー、エコ設計などのワークショップを開催している。これまで1500人以上がプログラムを修了し、25000世帯以上が自家発電に移行するのを手伝ってきた。「デモホーム」プログラムでは、市民が27州にあるエネルギー効率のよい個人宅を見学できるようにしている。
夏には、ソーラー発電によるコンサートも開催しており、同社が主催するソーラー祭り「ソルフェスト」には、毎年、1万人が参加する。

  同社では、小売部門以外に、再生エネルギー部門を設けており、96年には、中米ベリーズのエコリゾート地に史上最大のソーラー電気システムを設置した。これ以外にも、メキシコやバージン諸島などのリゾート地に同様のエネルギーシステムを設置しており、今後も、中南米のエコリゾート地に向けた同部門の成長が期待されている。

 アメリカでは、今年から電力市場が自由化され、消費者は電力会社を選べるようになったが、リアルグッズでは、水力・風力・地熱発電を利用するエコ電力会社と組み、環境に優しいエネルギーの利用を顧客に促している。
  同社では、毎年、財務監査ならぬ、エコ監査を行ない、エネルギーや紙などの利用法、固形廃棄物の処理法などを年次報告書で報告している。

 創立者のシェイファー社長は、60年代、学生運動の洗礼を受け、70年代、サンフランシスコ郊外のコミューンに移住。エネルギー自給、飲水確保などの必要性からさまざまなエネルギー再生製品を利用し、そうした製品の販売を開始するに至った。82年までには3店舗を構え、売上は300万ドルにのぼっていたが、85年、会社をパートナーに売却した。ところが、6ヶ月後、売却金を受け取る前に、会社は倒産。そこで、86年、2000人の顧客リストをもとに、資本も店舗も必要としない通販カタログを開始した。
 その後、10年間で、売上は1800ドルから1800万ドルと1000倍に増加。94年には、オレゴン州ユージーン、97年には、バークレーに新たな店舗を開店し、バークレー店では、1ヶ月で30万ドルという予想以上の売上を達成している。

  同社では、ソーラーリビングセンターや新店舗の開設資金は、すべてDPO(証券取引所や店頭市場を使わず、自社の株式を直接公開)によって調達している。 DPOは、低コストの資金調達方法であるだけでなく、忠実な顧客ベースを築く上でも役立つ。たいていの人は、同じ製品を買うなら、自分が株主である企業の製品を買うからだ。同社では、株主の95%が顧客であり、生まれて始めて株を所有したという株主が多い。株主総会には全米だけでなく、海外からの参加も含め、700人の株主が集まるという。

  同社が第一回目のDPOを行なったのは、91年、まだDPOという言葉が知られていない頃だった。全米で第41番目の申請をし、SEC(米証券取引委員会)の許可を得る初の企業となった。
このとき調達した100万ドル(必要以上に集まった40万ドルは返却された)は、借金の返済にあてられた。93年には、ソーラーリビングセンター建設のために、360万ドル(やはり超過調達した100万ドルは返却)をDPOで調達した。
  同社の株式は、パシフィック証券取引所とナスダックのスモールキャップマーケットで取引されている。

 株の売買はブローカーを通してのみ許されているため、同社は、顧客・株主のために、ウエブサイト上で株主間の売買ができるよう、SECに申請したが、前代未聞の問い合わせにSECから連絡が来るまでに9ヶ月を要したという。しかし、96年7月に許可を得、ウエブ上で株式売買市場を運営する初の企業となった。
 現在、第三回目のDPOを行っているが、同社のウエブサイトでクレジットカードで株を購入することもできる。

 先月号でも説明したように、現在、アメリカではDPOが盛んであるが、DPOに成功する企業は6割と言われている。リアルグッズが成功した理由は、大きな顧客データベースを築き、かつ顧客が信じる企業理念をかかげているからだ。同社では、今後も、DPOが主要資金ソースとなる予定だ。

 ここ数年の間に、北カリフォルニア、南カリフォルニア、コロラド、シアトル、ボストン、テキサスなどに新たに7店の開店を予定しており、最終的には全米に40~50店を設ける構えだ。
 96年に日本へのマーケティングも開始し、日本市場の開拓にも積極的である。


有元美津世/ベンチャーリンク誌1998年4月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1998

Revised 6/1/98 web2@getglobal.com

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