米国ニュービジネス発掘−5−

返済は売上高からの歩合で

スモールビジネス投資業


会社名: Royal Capital Management, Inc.
設 立: 1992年
代 表: Arthur L. Fox, John E. Trombly

 日本では、アメリカでは創業資金が簡単に入手できると考えられているフシがあるが、アメリカでも、ほとんどのスモールビジネスは、創業資金を貯金や家族知人からの借金で捻出する。

 銀行は、スタートアップは相手にしないし、担保となる有形資産がなければ融資は行なわない。一方、ベンチャー・キャピタリストは、一般に100万ドル未満の投資には興味がない。

 「ベンチャーキャピタリストが狙うのは、100万ドルを2000万ドルにすること。我々が対象とするスモールビジネスは、3000万ドル、5000万ドルビジネスになりはしないから、対象外」というのは、ロイヤルティ・キャピタル・ファンド(RCF)のアーサー・フォックス氏だ。 「80年代後半、アメリカのベンチャーキャピタリストらは、投資判断を誤り、資本利益率が悪化。年金基金など機関投資家らが投資に消極的になった。投資家らは、長期的な成長の見込める、より安全で、より早く資金回収ができる投資先、つまりより成熟したビジネスを求めるようになったんです」 こうして金融機関からもベンチャーキャピタリストからも相手にされない起業家らのために、フォックス代表は、総収入に対する歩合(ロイヤルティ)を徴収するというユニークな投資方法を考え出した。

 RCFの対象投資額は、5万ドル〜30万ドルで、今までの最高投資額は20万ドル。RCFでは、前月の売上に対し、5〜10%のロイヤルティを毎月徴収する。ロイヤルティの率は、元本が投資後9〜18ヶ月で回収されるように設定される。一定の返済期間は設けられず、返済は、返済額が投資額の5倍に達した時点で終了する。たとえば、投資額が10万ドルとすると、返済額は元本を含めて50万ドルとなる。

 一見、高い融資のように見えるが、フォックス代表は、「株式投資に比べて、決して高くはない」という。「株式投資家は、5年間に投資額の10〜20倍の利益を要求するが、ロイヤルティ投資の場合、 は投資額の平均3.4倍(税引き後)」

 もう一つ、起業家にとっての大きなメリットは、株式投資のように、所有権や経営権を失うこともなければ、株主に株式公開や会社の売却を迫られることもないということ。「スモールビジネス経営者には、株式を公開したり、会社を売却したくない人が多いのです」

 投資家にとっても、自然に清算されるため、会社の売却や株式公開などの“退出計画”(Exit Plan)を立てる必要がない。少なくとも毎月現金が返済されるためリスクは軽減する。また、株式保有の場合、会社に成長してもらう必要があり、起業家の経営力が問われるが、ロイヤルティベースであれば、初めの3〜5年、最初の製品さえ成功すれば、資金は回収できる。

 一方、売上高にかかわらず、毎月の元本・金利返済が必要な金融機関による融資と比べても、返済額は売上高に応じるという利点がある。さらに、融資のように、個人による返済保証を必要としない。特にコンピューターソフト開発会社などは、有形資産がないため、銀行から融資を受けるのはほとんど不可能だ。 同社では知的財産に価値を見出すので、銀行では考えられないような投資ができるという。

 元々、エンジニアであったフォックス氏自身、これまでに3つの会社を起こした経験がある。フォックス氏と、やはりエンジニア出身のトロンブリー氏は、一緒に会社を起こして成功した後、それぞれ起業家のためのコンサルティング業を営んでいた。しかし、クライアントは、一時間200ドルのコンサルティング料が払えない。そこで、料金を半額にし、残りはストック・オプションにすることにした。「料金に対し請求書を送っておくから、売上が入ったら、その5〜10%を支払ってくれと頼んだところ、この方式がうまく行った」

 そこで、両氏は、それぞれ資金を出し合い、計50万ドルの資金でRCFを開始した。92年に初めてマルチメディア・ソフト開発会社とレーザープリンター用トナーカートリッジのメーカーに、35万ドルを投資。94年には、さらに28人の個人投資家から260万ドルを集めた。2社とも、3年以内に、元本・利益分とともに返済した。

 同社では、この他、Tシャツ製作会社、グルメアイスクリーム製造会社、インターラクティブ・ゲーム製造会社など5社に投資してきた。このうちの2社は、すでにつぶれている。「起業の際に投資した場合、10社に投資すれば、5年以内に5〜7社つぶれると言われている」から、これは平均的な数字だという。

 RCFが、投資先を選ぶ基準は、1)製品が既に完成していること、2)市場が既にあること(新たに市場を教育するといった製品は不適切)、3)粗利が大きいこと(少なくとも50%)。株式資本とは異なり、市場や売上、成長率が大きいというのは、必要条件ではない。売上が確実に予想できる方が重要である。

 同社では、投資先を選考する際に、まず電話で15分も話をすれば、さらに検討すべきかどうか判断がつくという。最終選考段階では、元FBI捜査官の私立探偵を雇い、たとえばアル中歴はないかなど、運転歴や法廷記録まで、経営者の経歴を詳しく調査する。また、リスク軽減のために、ソフトや技術などの知的資産に対し担保権を取得する。

 RCFでは、310万ドルを個人投資家から集めているが、投資家の4分の3が起業家であるという。「起業家のことを本当に理解しているのは起業家。自分でビジネスを起こしたことのない投資家には、売上に対するロイヤルティベースという考えが理解できないようです」 同社では、ロイヤルティの23%を管理費として徴収し、残りの77%は有限パートナーたちに分配する。返済額が投資額の3倍にのぼると、同社の取り分が30%、有限パートナーへの配分が70%となる。

 「投資家は、投資する会社を自分の目で見てみたいというものなので、ボストンで、カリフォルニアの会社への投資家を見つけるというのは難しい」 そのため、同社では、全米各地で投資家を見つけるため、1年以内にフランチャイズ展開を考えている。同社には、すでに南アフリカから、同様のキャピタルファンドを始めたいという問い合わせが来ている。日本からも、同様のファンド設立に関する問い合わせを歓迎するということだ。


有元美津世/ベンチャーリンク誌1997年 5月 掲載  Copyright GloalLINK 1997

Revised 6/10/97 web2@getglobal.com

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