米国ニュービジネス発掘−32−

空港での待ち時間を有効利用
時間貸しオフィススペース

会社名:Laptop Lane,Inc.
設  立:1996年
代表者:Bruce Merrell
URLhttp://www.laptoplane.com

搭乗手続き後も仕事ができる

 急増するモバイルワーカーにとって、どこでもコンピューターが使えるというのは大事なこと。昨年、JR東日本がコクヨと共同で、東京駅にステーションオフィスクラブを開設して話題になったが、飛行機による出張が多いアメリカでは、同様の時間貸しオフィススペースが空港に登場している。

 シアトルを本拠とするラップトップレーンでは、現在、4空港にインターネットへのアクセスつき貸しオフィスを設けている。4拠点ともそれぞれ約1.8メートル四方の個室が12〜15室あり、電子メールソフトやビジネスソフトが搭載されたペンティアム200MHzデスクトップ、レーザープリンター、ファックス、会議通話のできる複数回線電話、T-1ラインが装備されている。自分のラップトップを使いたければ、普通のモデム、LANコネクター、モニターやキーボードが利用できる。その他、ZIPドライブ、スキャナー、デジタルカメラ、海外出張者用アダプターなどが用意されている。

 当初、30分8.95ドルという料金体系だったが、「10分だけ使いたい」といった利用者が多いため、最初の5分は2ドル、その後、1分間38セントという料金体系に切り換えた。料金には、長距離電話、国内ファックス、黒白コピー、インターネット接続料が含まれており、カラー印刷やコピーは別途徴収される。

 ラップトップレーンは、週7日、1日16時間オープン。サイバーコンシェルジェにクレジットカードを渡すと個室のカギを渡される。各施設には2〜3人のサイバーコンシェルジェが待機しており、ハード、ソフト、接続に関して問題があれば無料でサポートを提供する。宅配便の発送やデジタル写真サービスなども受け付けている。

 また、コンピューター製品は移り変わりが速いため、ラップトップレーンでは、コンピューター供給業者との契約で、年に2回の割合で使用製品をアップグレードすることになっており、業者にとっては新製品展示の場、利用者にとっては新製品を試用できる場でもある。コンピュータの最新製品情報を利用者に説明するのもサイバーコンシェルジェの役目だ。

自らの体験をもとに事業開発

  同社は、96年、ブルース・メレル、グラント・シャープ、マーク・マクニーリー、ジェイミー・オーエンズの4氏によって設立された。石油業界出身のメレル社長は、これまでにベンチャー企業3社の最高責任者を勤めたことがある。年間15万マイルも飛行機で出張していたメレル社長は、空港でラップトップのバッテリーを充電するために電源を探しまわったり、騒音で聞き取りにくい公衆電話を使うために並んで待ったり、静かに仕事ができる場所を探すのに苦労したという自らの経験からラップトップレーンを思い付いた。「スーツで床に四つんばいになって電源を探したり、自動販売機の電源を抜いたりするビジネスマンを目撃し、“静かな場所とT1ラインさえあれば”という願いは、自分だけでなく、出張者に共通したものであることを確信しました」とメレル社長は語る。

 調査によると、平均的出張者は、乗り継ぎの際に空港で一時間以上の待ち時間があるという。航空会社では、乗客が機内で仕事ができるよう、ファーストクラスやビジネスクラスの座席に電源の設置を進めている。機内で電子メールを書いたり、資料を作成するなど一仕事終えた後は当然、着陸と同時に電子メールを送付したり、資料を印刷したいというニーズが増える。

 ラップトップレーンが事業を展開するにあたって一番大変だったのは、空港との折衝だったという。まず、空港というのは10年計画で動くため、空港に出店するには10年前から交渉を開始しなければならない。また、官僚体質の空港との折衝には時間と忍耐が強いられた。「まずアイデアを売り込み、次に契約、そして設計という難関をパスしなければなりませんでした」(メレル社長)

 ラップトップレーンの設計は、各空港の設計基準に合わせなければならない。設計は、小売デザイン会社を経営する共同創立者のオーエンズ氏が担当した。開設にはリース代から建設費までかなりのコストがかかるが、一番コスト高なのはワークステーションだという。空港によっては外側の壁の建築費も負担しなければならないときもある。

 96年に、空港の担当者がラップトップレーンのアイデアに深く共感した、シンシナチ・ケンタッキーの空港に1号店をオープン。その後、シアトル、シカゴ、アトランタに進出した。現在、シカゴには2施設、アトランタには3施設あるが、将来は、シカゴ6〜8カ所、アトランタ8カ所に増設するつもりだ。現在、1日の利用者数はシカゴが60〜80人、シアトルが40〜60人だが、倍増するのを目標としている。

 空港内の場所は、空港によって選べる場合もあれば、空港側が指定してくる場合もある。選ぶ基準としてはスペースの確保ができ、人通りが多く、X線による手荷物検査を通過した後であること。「乗客にとって一番心配なのはゲートまでの距離です。それを解消する必要があります」(メレル社長)

 ラップトップレーンでは、各空港で一番主要な航空会社のコンコースに開設することにしている。利用する航空会社によって通過する空港が決まってくるので、航空会社の各ハブに開設し、各空港でラップトップレーンが利用できるようネットワークを構築する。

成田空港にも進出予定

 同社はこれまで広告は一切せず、利用者が偶然見つけたり、クチコミで広がってきたが、最近、マーケティング担当者を採用し、機内雑誌などで広告を開始する予定だ。航空会社とも提携し、マイレッジプログラムにも参加する。

 「航空会社のファーストクラス、ビジネスクラス向けラウンジとは競合しません。ラウンジはリラックスし、楽しむ場として設計されており、飲んだり食べたりするためのスペースはあるが、仕事をする場ではない。ラップトップレーンは、ラウンジに対してはプラスアルファ的な位置づけです。」(メレル社長)

 独自の常時利用者向け割引などの特典を提供する予定もあり、企業と契約をし、契約料金による社員の利用を促す。
 ラップトップレーンでは、5年以内にトップ60の空港に100カ所の施設を開設する予定だ。まずはトップ25の空港をターゲットとしており、今年中にニューヨーク、ダラス、デンバー、フィラデルフィア、フェニックスなどに開設する。さらには、成田を含む海外の空港トップ24にも出店する。

 同社では、空港に限らず、将来的には会議場、見本市会場などにも出店し、さらに都市部のビジネス街で時間貸しオフィスを運営する計画である。


有元美津世/ベンチャーリンク誌1999年8月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1999
Revised 8/25/99 web2@getglobal.com
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