米国ニュービジネス発掘−31−

140軒分のメニューが揃う
レストランデリバリーサービス

会社名:Delicious Deliveries Phx, Inc.
設立 :1995年
代表者:Morgan Cislini

高級レストランも加盟

 料理をする暇などない多忙なライフスタイルを反映し、アメリカの都市部では、最近、複数のレストランと契約し、注文を取って配達をするレストランデリバリーサービスが流行っている。
 アリゾナ最大のレストランデリバリーサービス、デリシャスデリバリーでは、フェニックスの周辺都市でサービスを展開している。

 顧客は、加盟レストランのメニューを掲載した40ページのカタログをもとに、デリシャスデリバリーに電話。注文受付係が、顧客の名前、住所、レストラン名、注文品をカスタムメードのコンピュータープログラムに入力。スクリーン上に示された金額と配達時間を伝える。この情報は配送係のコンピューターに転送され、配送係は注文をレストランにファックスすると同時に、無線で運転手をレストランに配送。運転手は、注文品とファックスのコピーを受けとって配達に向かう。

 運転者は集金も行ない、顧客は、メニュー掲示価格プラス、配達あたり4.65ドルの配達料を支払う。レストランからは、売上に対する手数料30%と週に5ドルのマーケティング費を徴収する。代わりに、クレジットカード処理手数料、売上税の支払、また、配達時の不在、注文後のキャンセル、不渡り小切手などのリスクはすべてデリシャスデリバリーが負担する。紙皿やフォーク、ナイフ、ナプキン、塩コショウなども同社が提供する。レストランには、隔週で売上報告書が送付され、手数料やマーケティング費を差し引いた金額が支払われる。

 一日の注文数は約400件。85%が11時から2時半までの昼食時と6時半〜8時半までの夕食時に集中する。運転手は独立請負人を雇っているが、一日に200〜300ドルを稼ぐ運転手もおり、社員として時給を支払うよりもインセンティブとなるし、雇用者側としてはライアビリティを軽減できる。

 顧客層は、主に30代後半から40代前半の中〜高所得のホワイトカラー。共稼ぎで料理をしている暇はなく、利便性と引き換えに4.25ドルの配達料を払ってもよいという人たちだ。この層は健康志向のため、ピザやハンバーガーなどのファーストフードではなく、高級レストランを参加させるところがカギである。
 その他、盲目であったり、障害のある人、寝たきりの人、老人ホームで暮らす高齢者などにも利用されている。母の日やバレンタインデーなどは、1年でももっとも忙しい日だという。予約でいっぱいでレストランに入れない人たちが、キャビアなど、高級レストランの料理を利用するのだ。

インターネットでの展開も予定

 同社のモーガン・シスリーニ社長は、大学卒業後、コスタリカのコンピューターメーカーに就職。2年後にアリゾナに戻った後、ツーソン(アリゾナ州南部の都市)で友人らが始めていたデリシャスデリバリーのフェニックス都市部での展開を任された。その後、ツーソンとは別会社となり、同社の主要株主となった。

 会社は成長を続け、フェニックス地域の競合会社10社を買収。「すべて家族経営の小さな会社で、加盟レストランは12〜15軒程度。市場を奪うのは簡単でした」(シスリーニ社長)  シスリーニ社長は、創業当初、レストランを勧誘するために、電話帳をもとにレストランに片っ端から電話をし、最初の1ヶ月はレストラン訪問に費やしたという。「レストランにとって出前というのは、非常にコスト効果の悪いサービスです」とシスリーニ社長が言うように、マーケティングなどのコスト以外に、配達要員の管理や保険などの負担が加わるため、レストランにデリバリーサービスのメリットを理解してもらうのは困難ではなかったという。

 ただ、レストランが参加してくれないことには、メニューも作れないため、見せられるものがなく、信頼してもらうのに苦労した。デリシャスデリバリーからレストランへは後払いのため、先に食事を提供するレストラン側としては、与信を与えることになるため、慎重にならざるを得ない。しかし、数軒から始め、3〜4ヶ月後には75軒、今では加盟店は140軒以上に達している。

 レストランには独占契約を求め、他のデリバリーサービスとは契約しないことを条件づけているが、一度加盟したレストランは、まずやめることはないという。反対に、調理時間に時間がかかりすぎたり、注文ファックスをなくしたり、ミスの多いレストランは、同社の方から契ち切る。「一般に、大企業が運営するチェーンレストランは効率がよいですが、家族経営の小さなレストランの中には、非常にやりにくいところがあります」(シスリーニ社長)また、一定の地域に、たとえば中華レストランがありすぎるといった場合には、ミスが多かったり、売上の悪いレストランを削除する。

  レストランの売上は、週に平均500ドル。98年にデリシャスデリバリーを通じ、2店舗で40万ドルの売上をあげたレストランもある。
 レストランにすれば、配達を行なうことによって、レストランの客足が減るのではないかという心配があるが、「当社のサービスを利用することによって新たな顧客が開拓できる」とシスリーニ社長は語る。90%の顧客が特定のレストランの食事を求めているわけではなく、配達というサービスを求めているのであり、「おなかがすいているのだけれど、どこかいいレストランはないか?」という問い合わせが多いそうだ。

 レストランにとっては、デリシャスデリバリーによるマーケティング活動も魅力的である。同社では、4ヶ月ごとに地域別に2種類のメニューを15万〜20万部印刷。1万2000〜1万5000軒の家庭やホテル、企業に配布している。98年には100万部のメニューを印刷し、住人一人あたり1.2部を配布した。メニュー以外に、ミニメニューを配達地域のすべての住所に送付している。

 シスリーニ社長は、レストランデリバリーを始めたいという人にコンサルティングも提供しており、全米を飛び回っている。希望者には、デリシャスデリバリーの事務所を訪れ、注文受付、配送、運転、経理、マーケティングのすべてを実際にやってみることを勧めている。「突然、注文受付係や運転手が辞め、自分でこなさないといけなくなる日が必ず来ますから」(シスリーニ社長)

 同社では、現在、ウエブサイトを構築中で、インターネットでも注文ができるようにする予定だ。サンフランシスコでレストランデリバリーを行なうダイン・ワン・ワン(http://www.dine11.com)では、全米のレストランデリバリーサービスを統合してコールセンターを構築し、インターネットで注文を受けられるようにしている。デリシャスデリバリーも、今夏から、同社のサービスを利用する予定だ。


有元美津世/ベンチャーリンク誌1999年7月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1999
Revised 7/17/99 web2@getglobal.com
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