米国ニュービジネス発掘−29−

離婚調停サービス 法的書類申請まで代行

会社名:Devorce Wizards
設立 :1996年
代表者:Lynne Diamndo
URLhttp://www.divorcewizards.com

費用のかさむ訴訟離婚

  98年、日本では人口1000人対し1.94組が離婚をし、戦後最高の離婚率を記録したと言われるが、アメリカではカップルの半数が離婚すると言われている。

 アメリカには「協議離婚」というものはないため、たとえ夫婦間で合意に達していても、配偶者に書類を送達し、法廷に申請しなければならず、一般には弁護士を利用する。しかし、親権や財産分与で争わなければならない場合の弁護士費用はかさみ、「裁判に費やした費用で2人の子供が私立大学に行けた」というケースさえある。

 こうした費用や、訴訟に費やされる膨大な時間、また法廷での対決的な争いによる精神的苦痛を避けるために、10年ほど前から訴訟に代わる調停が利用されはじめた。特に親権をめぐり争う夫婦に調停を命ずる裁判所が増え、自ら調停を選ぶ夫婦も増加し、営利の調停サービスも出現している。

 「カリフォルニア州オレンジ郡での平均離婚費用は一人18000ドルですが、私どものクライアントが費やす費用は、ほとんどの場合5000ドル以下です」というのは、オレンジ郡で離婚調停サービス、Divorce Wizards(「離婚の達人たち」)を営むリン・ダイヤモンド氏だ。弁護士は夫婦両者を代弁することは禁じられているため、夫婦がそれぞれ別の弁護士を雇わなければならないが、調停の場合は夫婦そろって一人の調停者を利用することができる。

 費用以外にも、「裁判官が強制的に押しつける判定よりも、当事者同士が交渉して合意した方が、当事者にとって納得のいくものであるし、合意内容を守る動機になる」とダイヤモンド氏は調停のメリットを語る。

 Divorce Wizardsでは、調停、コンサルティング、法的書類作成・申請、養育費計算の4つのサービスを提供している。料金は、収入により1時間150〜200ドル。法的文書作成・申請は、作業内容により50〜500ドルだ。

 調停に必要な時間は、夫婦間の対立状態により、「結婚生活が長く、資産が多ければ、6〜7セッション、結婚生活が10年以下であれば、3〜4セッションといったところです」 ダイヤモンド氏がこれまで調停したカップルの資産は、マイナス15万ドル(つまり負債)から1000万ドルと実にさまざまだ。

 親権問題に関しては、法廷による無料調停サービスがあるが、1〜2セッションのみで、9時から5時の開廷時間に出廷しなければならない。「プライベートの調停の方が、プライバシーが守れ、より中立で、時間的にも融通がききます」ダイヤモンド氏は、クライアントの都合に合わせ、勤務後や週末にもアポイントを取る。

 しかし、誰にでも調停が向くわけではなく、「家庭内暴力がある場合や夫婦の一方が財産を隠していると思われる場合は、調停を断ります」 弁護士を使った場合、手続き上、隠し財産が見つかってしまうため、財産を持っている側の方が、財産隠しのために調停を利用する場合があるという。

弁護士など専門家とも協力

  ダイヤモンド氏は、Divorce Wizardsを始める前、13年間、証券ブローカーとして勤めていた。友人が痛々しい離婚を経験するのを見て、「もっとよいやり方があるはず」と思い、非営利のコミュニティサービスプログラムで5年間ボランティアを務め、離婚調停のトレーニングを受けた。

 証券売買から離婚調停という180度の転身に「クライアントが恐怖と欲に駆り立てられているという意味では、どちらも同じ」とダイヤモンド氏は微笑む。証券業界での経験は、離婚調停で財産分与や財務アドバイスをする上で役立つという。

 ダイヤモンド氏は、人事学と心理学カウンセリングで2つの修士号を持つが、「離婚調停では、心理カウンセリングは行ないません。離婚調停はあくまでも離婚手続きをサポートし、親権や財産分与に関する問題を解決するもの」と言い、心理カウンセリングが必要なクライアントやその子供にはセラピストを紹介するという。

 ダイヤモンド氏は、セラピスト以外にも、弁護士、会計士、ファイナンシャルプラナーなどの専門家と協力し、相互にクライアントを紹介しあったり、情報交換を行なっている。クライアントには、必ず弁護士に相談するようにアドバイスし、弁護士が必要なクライアントには弁護士を紹介する。

 離婚調停サービスは、離婚をあつかう家族法弁護士にとっては競合となるため、快く思っていない弁護士もいる。Divorce Wizardsの新聞広告に対し、弁護士協会から「法的アドバイスの提供に関しては表現に気をつけるように」と注意があったという。

婚手続きもオンラインで

   創業とともに立ち上げた同社のウエブサイトには、離婚に役立つさまざまな情報・アドバイス、自分のケースには調停が向くか、訴訟が向くかを診断できるクイズが掲載され、専門家に向け質問を書き込むことができる。

 98年には、セルフサービスのオンライン離婚手続きサービス、「Divorce Yourself」を開始。オンラインで必要事項に記入し、クレジットカード番号を入力すれば、書類が作成され、郵送されてくる。それを法廷に申請、配偶者に送達し、他の必要書類を記入し、申請するというプロセスだが、たいていの人はまず電子メールや電話でダイヤモンド氏に相談してくるという。料金はオフラインの書類作成料金と同じで、一式頼めば500ドルだ。

 Divorce Wizardsでは、(「離婚を乗り切る方法」)という、ダイヤモンド氏、弁護士、セラピスト、ファイナンシャルプラナーによる4本セットのテープも販売しており、同テーマでセミナーも行なっている。

 離婚調停で一番大変なのは、怒りなどクライアントのネガティブな感情と向き合わなければならないことだという。「証券売買の場合、株価が下がっても、また上がり、ポジティブな面もあるが、離婚調停の場合、ポジティブな面がない」。カウンセラーや家族法弁護士の間でもバーンアウト率は高い。

 しかし、長年、主婦をしてきたような女性が自信をつけ、自立していく姿を見るときには、報われるという。ダイヤモンド氏の夢は、Divorce Wizardsを全米、海外にフランチャイズすることだ。



有元美津世/ベンチャーリンク誌1999年5月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1999
Revised 5/28/99 web2@getglobal.com
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