米国ニュービジネス発掘−28−

企業のバーター取引を支援 
バーター取引ネットワーク

会社名:International Barter Corp.
設立:1996年
代表者:Steven White
URLhttp://www.ibinc.com

物々交換をネットワーク化

  アメリカでは、最近、バーター取引、いわゆる物々交換が新たなビジネスツールとして脚光をあびている。たとえば、印刷業者は宣伝パンフレットを無料で印刷する代わりに、レストランでの食事を受け取るというものだ。しかし、一対一で取引しているだけでは、交換できるものが限られる。そこで登場したのがバーター取引ネットワークだ。取引ネットワークではバータークレジット(つまり取引通貨)を発行して銀行としての役割を果たすと同時に、各会員の業務内容を宣伝し、会員同士の取引を促進する。

 1取引ドルは1米ドルに相当し、先の印刷業者は、レストランでの食事の代わりに、レストラン向けに行なった印刷作業に対してバータークレジットを得、そのバータークレジットを使って、ホテルに泊まったり、レンタカーを借りたりすることができる。

 会員企業にとってのメリットは、まずバーター取引では現金流出の必要がないということ。そして、余剰品、在庫処分品などの新たな販売チャネルが得られること。交換ネットワークに参加することにより、会員である地元ビジネスから成る市場にすぐにアクセスでき、広告・販促費に削減にもつながるということである。また、会員はバータークレジットを利用するために、会員同士で取引をしようとするため、リピート客の獲得につながる。

 バータークレジットのやりとりの記録は取引ネットワークが行なうため、売り手が受取勘定を追ったり、毎月の決算書を作成したり、遅延支払の請求をする必要はない。また、買い手も各取引先に口座を開いたり、注文書の作成をしたり、支払小切手を発行する必要がない(なお、物々交換でも取引額に対し所得税は課税される)。

 現在、全米で25万以上のビジネスが取引ネットワークに登録し、年間80億ドルの取引を行なっているといわれている。バーター取引に参加するビジネスでは、売上の10〜15%をバーター取引で行なうところが多い。

 こうしたなか、地元ビジネスだけではなく、大企業向けバーター取引やインターネットを利用したバーター取引に力を入れている取引ネットワークがシアトルにある。

 「たとえば、メーカーや販売業者は、97年の古いモデルのテレビを抱えていても、一般の販売経路では売れません。バーター取引は、企業の在庫余剰品を処分するのに非常に有効な方法なのです」と言うのはインターナショナル・バーターコーポレーション(IBC)の運営担当副社長で、企業向けバーター取引の開発を主に担当するアラン・ジメルマン氏だ。「特にラジオ広告、ホテル空室、食品などの有効期限が限られた商品・サービスに、バーター取引は最適です」とジメルマン氏は指摘する。たとえば、一泊200ドルのホテルの空室10室は、その晩に使わなければ無駄になるが、それと交換に2000ドルの新しいコピー機を入手するといったことが可能になるのだ。

 「バーター取引のいいところは、古いテレビはホテルが購入し、ホテルの空室はラジオ局が出張に利用、といったように、どんどんバーター取引が繰り返されていくなか、商品が動くたびに手数料を徴収できるところで、しかも、取引を重ねても取引額が減少しないところです」とジメルマン氏は言う。さらに「バーター取引にはインフレもありません」とつけ加える。

 同社では、バーター取引用のクレジットカード、IBCカードを発行しており、会員は、たとえば加盟レストランで食事をしたときにはIBCカードを提示するだけでよい。一般のクレジットカードと同じで、レストランはバウチャーを切り、加盟取引ネットワークに提出するという仕組みである。

 IBCの会員には、タイムシェア、フレーム会社チェーン、ピザ屋、ホテルなど、計4500、98年の取引額は計700万ドルにのぼった。入会金は495ドル、月会費は現金15ドルと取引クレジット15ドル、取引の際には手数料として10%が徴収される。年に2度、会員名簿を出版し、毎月新たな会員リストを配布。毎月のニュースレター以外に、週に2回、ファックスで最新情報を提供する。

 各会員には担当のブローカーがつき、最新商品・サービスを紹介したり、取引のアイデアを提供したりする。一度会員になると退会する人は少なく、ビジネスが売却されたても、新しいオーナーが会員権を受け継ぐ場合が多いという。

80のネットに50万人

 IBC社長のスティーブ・ホワイト氏は、建設業界にいる間にバーターに出会った。同業界では建築資材を調達するなどバーターが盛んであり、そのコンセプトに魅せられ、93年、前夫人とともに、取引ネットワーク、カスケードトレードアソシエーション(CTA)を創立した。会員数6〜700人までに成長したが、それだけでは満足がいかず、96年、新たにインターナショナル・バーター・コーポレーション(IBC)を設立した。

 ホワイト社長は、100の取引ネットワークが加わる業界団体、全米取引交換ネットワーク協会(NATE)の会長も務めている。NATEは、業界の自己管理機構で詐欺などを取り締まったり、業界の水準の維持に努める。

 NATEでは、97年、BANC(バーター協会全米通貨)を設定し、会員がコンピューターシステムを通じ、他の取引ネットワークと取引ドルを交換できるようにした。取引ネットワークは、一般に地元のビジネスを中心にしているため、取引の範囲が限られるが、BANCを通じれば、全米規模での取引も可能である。現在、80の取引ネットワーク、50万人の会員がBANCを利用している。

 IBCが、今一番力を入れているのは、インターネット上でバーター取引を行なうことである。98年、Ubarter.comを立ち上げたが、うまく軌道に乗らず、99年3月に再度新たにサイトを立ち上げる予定だ。Ubarter.comでの登録は無料で、将来的にはクライアントのプロフィールを作成し、サービスをパーソナライズする計画である。同社では、現在、オフラインの会員にコンピューターを支給し、会員のオンライン化に努めている。

 「現在、何らかの形でバーター取引をしているのは、アメリカ企業全体の3%のみに過ぎず、今後、インターネットを通じた取引により大きな成長が期待できる」とジメルマン副社長は抱負を語る。

   IBCでは海外とのバーター取引にも積極的で、現在、カナダ、オーストラリAに進出中である。取引額は当事者の間での有効価値によって決められ、現金通貨とはまったく関係がないため、ロシアやブラジルなど金融危機を迎える国にとっては、非常に有効な取引手段である。



有元美津世/ベンチャーリンク誌1999年4月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1999
Revised 4/27/99 web2@getglobal.com
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