米国ニュービジネス発掘−27−
電子切手が本格稼働! アジアへの進出も検討 会社名:Stamps.com(元StampMaster, Inc.) 設 立:1996年 代表者:John Payne URL:http://www.stamps.com 電子切手がいよいよ実用化 アメリカでは、今年、インターネットでの切手購入が実現する。現在、米国郵政公社の認可を受け、ベータテスト(開発中のハードウェア、ソフトウェアを一部のユーザーに発布し、実際の利用環境でテストしてもらうこと)が進められている電子切手は、ユーザーがインターネットで切手をダウンロードし、レーザープリンターやインクジェットプリンターを使って直接封筒に印刷するというものだ。 印刷される2Dのバーコードには、差出人住所、宛先、送料、印刷日時、利用ソフトなどの情報およびセキュリティ情報がデジタル化されている。2つと同じコードはないため、印刷したものをコピーして不正利用することは不可能だ。 米国郵政公社では、1995年にPCベースの切手、正式名称「情報ベース証印プログラム」を開始した。現在、多くの企業で利用されているメーリングマシーンは手が加えやすく、年間1億ドルにものぼる不正利用による損失を削減するのがプログラムの目的だ。メーリングマシーンが郵政公社の承認を受けたのが1920年であるから、78年ぶりの革新である。 電子切手市場は、99年100万ドル、2000年1.27億ドル、2003年には19億ドルに成長すると予測されており、この市場をめぐり、ベンダー間ではすでに激しい競争が繰り広げられている。 最初に郵政公社の認可を受けたE-Stampは、CD-ROMとPCのパラレルポートに取り付けるハードを利用したシステムを提供している。インターネットでまとめてダウンロードした切手は、このハードに保存されるため、ユーザはこのハードを購入しなければならない。同社は、マイクロソフトやコンパックなどから出資を受けており、コンパックのコンピューターにはすでに同社のソフトがバンドルされている。 フランス系の国際メーリングマシーンメーカー、ネオポストも、同様のシステムを開発している。140万台のメーリングマシーンで41億ドルの売上をあげている老舗のピットニーボウも、市場シェア攻防のために電子切手市場に参入した。 もともと、郵政公社指定の仕様では、切手情報を保存するハードを必要としていたが、その仕様に対し、ハードを必要としないソフトだけのサーバベースのサービスを提案したのがStamps.comだ。 郵政公社ではこれを受け、97年に認可手続きを開始。98年8月にベータテストが認可され、現在、ワシントンDCとサンフランシスコでベータテストが行なわれている。テストが完了後、99年初期に全米での展開を予定している。 Stamps.comでは、ソフトを無料で提供し、購入切手額に応じた手数料を徴収する。手数料は約10%になる見込みで、初期設定費などは一切ない。「現在、メーリングマシーンや切手再販業者では17〜25%の手数料を徴収しており、それに比べれば割安」とジョン・ペイン社長はメリットを強調する。 同社のソフトは、マイクロソフトのワードやアウトルックなどにも統合され、ワード文書から住所を自動的に印刷ダイアログに抽出することができる。送料の計算もオンラインででき、支払はクレジットカードや口座引き落しによる。 同社では、切手以外にも、便箋、封筒、宛名ラベル、プリンター、秤などをオンラインで販売する予定だ。 Stamps.comの製品はハード不要である以外に、オンラインで自動的に情報をアップデートでき、郵送料が変更した場合でも、一夜のうちにサーバ上で変更が可能であるというメリットがある。「各コンピューターにハードを取り付ける他社のやり方では、コンピューターごとに変更を実施しなければならない」(ペイン社長) ターゲットはSOHO層 Stamps.comは、96年、UCLAのMBAの学生3人によって創立された。就職活動中、履歴書を送る際に手元に切手がなく、コンピューターで印刷できないものかと思ったのが起業のキッカケとなった。 自己資金で立ち上げ、6ヶ月後、南カリフォルニア最大のベンチャーキャピタリスト3社から600万ドルの出資を受けた。製品開発に1年半を費やし、認可プロセスにも一年半を要した。 同社のシステムが郵政公社の認可を受けた後、競合会社が次々にブラウザーベースの製品開発を発表したが、「他者では1年半にわたる認可プロセスをいちからやり直さなければなりませんから」と同社では楽観視している。 同社では、AOLと提携し、独占契約でStamps.comのソフトをAOLスタートアップCD-ROMにバンドル、また99年初めに開始予定のAOLの切手サービスセンターやコンピューティングチャネルのソフトダウンロードセンターでも同社のソフトを提供する。 同社では、まず全米に4000万以上存在するといわれるSOHO市場をターゲットにする。ベータテストは月に30〜500通の郵便物を発送し、メーリングマシーンを利用しておらず、インターネットアクセスがあるSOHOを対象にしている。メーリングマシーンのレンタル料は、月に最低20ドルかかるため、メーリングマシーンを使っているSOHOは全体の28%にすぎない。 同社では、企業のITへの統合やイントラネットソリューションの提供も計画しており、企業向けにもマーケティングを行なう予定だ。同社では、この5年で500万〜1000万の利用者獲得を目標としており、99年にはこのために1500万ドルの資金調達を予定している。 電子切手は、今のところ、国内郵便に限られ、国際郵便には利用できない。しかし、各国の郵政管轄局による国際郵政コンソーシアムでは電子切手の利用が話し合われているそうだ。 また、米国郵政公社では、海外の郵政管轄局からインターンを受け入れるインターンシップ制度を設けており、これを通じ、各国に電子切手のコンセプトを広める考えである。 Stamps.comでも、各国政府、またはシステムインテグレータとの提携により、すでにヨーロッパ、アジアへの進出を検討中だ。 有元美津世/ベンチャーリンク誌1999年3月号掲載 Copyright GloalLINK 1997-1999 Revised 4/1/99 nu web2@getglobal.com 「米国ニュービジネス発掘」インデックスへ |