米国ニュービジネス発掘−35−

最新のテクノロジーを応用
コンピュータ内蔵型ピアノ

会社名:Van Koevering
設  立:1994年
代表者:April Morris
URLhttp://www.vankoevering.com/


 バン・クーベリング社のインターラクティブピアノは、一見、普通のピアノに見えるが、鍵盤の上にあるのはタッチスクリーン、中にあるのは弦ではなく、ウィンドウズ95を走らせたCPUだ。その他、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、フロッピードライブ、モデム、プリンターやモニター、キーボード接続のためのポートが搭載されたフル装備のコンピューターである。「最新のテクノロジーを利用したいが、ピアノの美しい外観は捨てたくない」という消費者のニーズに応えた製品だ。

 アップライト型からベビーグランドピアノまで3種類のモデルがあり、どのモデルも120ワットのアンプを内蔵し、ベビーグランドピアノは8つのスピーカーを搭載している。また他のオーディオシステムを接続することもできる。

 音色は47の打楽器音と128の他の楽器音を奏で、ゴスペルからヒップホップまで40種類の音楽を81の効果音で楽しめる。

 タッチスクリーンのよいところは、シンセサイザーのようにノブやダイヤル、スライダーを操作する必要はなく、すべてタッチスクリーンでコントロールできるところだ。また、タッチスクリーン上で譜面をめくるには、フットペダルを利用する。

 楽譜作成ソフトを使えば、鍵盤を押すだけでスクリーン上に楽譜を表示することもできる。この楽譜はディスクに保存したり、印刷することも可能である。

 モデムは、同社のウエブサイトの「ミュージックモール」に直結しており、練習譜(レッスン?)やソフトのアップグレードなどを直接ピアノにダウンロードすることができる。

 また、カラオケソフトを使えば、スクリーンに歌詞が現れ、カラオケも楽しめる。  「デジタルサウンドと一般のMIDI(音楽楽器デジタルインターフェース)互換性を、タッチスクリーン、モデム接続、フロッピードライブ、CD-ROM ドライブ、ハードドライブと統合した唯一の音楽楽器」と同社は自負する。

 価格は8000ドルからで、もっとも高額なベビーグランドピアノは14000ドルだ。

 同社は、94年、60年代にシンセサイザーを生み出したボブ・モーグ氏とデイビッド・バン・クーベリング氏によって設立された。インターラクティブピアノの開発に2年を投じた後、97年より販売を開始した。

 ピアノは、イタリア製のキャビネットを購入して、同社のアイオワの本社で組み立てる。営業マーケティングはカリフォルニア事務所で行っており、学校などの機関ユーザーへの販売を中心に行うため、まもなくボストンにも事務所を開設する予定だ。

 同社では、学校などの機関ユーザーと個人客をターゲットにしているが、個人客は子供のいる家庭とベビーブーム世代が主要ターゲット市場だ。インターラクティブ性は、子供が楽しくピアノを学ぶのに役立ち、また筋肉や目の動きがボケ防止に役立つといわれ、熟年世代に突入しつつあるベビーブーム世代による需要が伸びると期待されている。

 最高責任者のエイプリル・モリス社長は、音楽業界での経験はないが、年齢的にターゲット層に属するということで、同社に出資をするベンチャーキャピタリストによってリクルートされた。  ソフトはサードパーティー開発によるものをタッチスクリーンに対応させ、IMT承認品として販売している。基本的には、ウィンドウズアプリケーションであれば、何でも走らせることができるが、タッチスクリーンのため、マウス対応のソフトは使いにくい。

 一部のソフトはピアノにバンドルされており、他のソフトも、ピアノ購入時に購入すれば、工場でプリインストールして出荷される。  ソフトは、同社のウエブサイトの「ミュージックモール」でも販売しており、注文はフリーダイヤルで受け付けているが、現在、オンライン注文機能をベータテスト中である。

 ピアノおよびソフトの販売は、全米80以上のピアノディーラーを通じて行っている。ディーラーは、ピアノを販売した顧客が購入するソフトに対しても、コミッションを受け取る。

 同社では、ディラー以外に、今年から「コンセプトストア」をオープン。「コンセプトストア」とは同社の製品を中心に販売する小売店で、各地域の起業家をマーケティングなどでサポートして新たに開店する。

 年間8万台という小さな電子ピアノ市場で、ヤマハやカワイ、ボールドウィンなど大手メーカーと競合する同社にとっての最大の難関は、新興であるため、知名度が低く、顧客ロイヤルティに欠ける点だ。しかし、インターラクティブ音楽タッチとよばれるタッチコントロール音楽システムなどで特許を取得しており、シームレスなインターラクティブ機能の開発には10工数年を費やし、インターラクティブ性においてはパイオニアを自負している。

 さらに「顧客サービスでは、他社には絶対負けない」とモリス社長は語気を強める。「顧客からの問い合わせには、電話にしろ、電子メールにしろ、必ず翌日に対応する」という。「翌日対応というのは、この業界では非常に稀なのです」これはディーラーからの問い合わせに対しても同様である。すぐに連絡がつくよう、顧客サービススタッフは、電話を自宅にも転送し、またポケットベルの番号も顧客に提供しているそうだ。

 同社では、99年第四四半期、VKフィルハーモニックという新たな製品を紹介する。これはピアノの上に設置する(ディーラーによる設置)だけで、既存のアコースティックピアノが同社のインターラクティブピアノとして使えるというものだ。つまり、普通のアコースティックピアノとしても、インターラクティブピアノとしても、随時両方の機能を利用できるということだ。

 同社では、99年中には海外へも進出する計画で、子供の教育に熱心な日本や香港、またヨーロッパをターゲットとしている。
 なお、今年11月には、昨年に引き続き、ラスベガスで行われるコムデックスに出展する。


有元美津世/ベンチャーリンク誌1999年11月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1999
Revised 11/26/99 web2@getglobal.com
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