米国ニュービジネス発掘−25−

顧客の目標達成を手助けする
コーチング事業をバーチャル展開

会社名:Coach University
設 立:1992年
代表者:Sandy Vilas
URLhttp://www.coachu.com
日本連絡先:コーチ21 http://www.coach.co.jp

 ここ数年、アメリカでは、コーチングという新しい職業が流行っている。コーチは、クライアントが目標を定め、その目標を達成するために、自己の才能やエネルギーを効果的に行動に換える手助けをする。スポーツのコーチが選手が試合に勝てるよう指導するように、コーチは、クライアントをより大きな成功、より大きな富、より質の高い生活へと導くものだ。

 コーチングは、コンサルティングやセラピーとは異なる。コンサルタントのようにアドバイスや指導をするのではなく、質問を通じクライアントの自発的行動を促すことによって、目標達成へと導いていく。また、セラピストが患者の情緒的過去に対して行なうことをクライアントのキャリアに関する将来に対して行なうとも言える。

 クライアントにはすでに成功しており、さらなる成功を求める人が多いとう。たとえば、経営者が事業を伸ばすため、企業の管理職が管理能力を磨くためにコーチを雇ったりする。アメリカでは、こうしたコーチが2000人以上いると言われる。

 もともと、コーチングは、コーチ養成バーチャル大学、コーチユニバーシティの創立者、トーマス・レオナード氏によって生み出された。会計士かつファイナンシャルプランナーであったレナード氏は、クライアントが人生の目標や計画を立てる助けを必要としていることに気がづいた。こうした人たちは、家庭生活も仕事も順調で、情緒的にも安定しており、必要なのはセラピーではなかった。「自分が本当にしたいことをするため、すばらしい将来を築くためにちょっとした手助けが必要な人はたくさんいる」と感じたレナード氏は、82年にライフプラニング(人生計画)セミナーを開始。これを後にコーチングと改名した。

 コーチングは、電話や電子メールを使って行なわれるため、クライアントとの地理的な距離は問題にならない。料金は一般に週30分の電話によるセッションで月200〜250ドル。企業重役を専門とするコーチはこれより高い場合が多く、企業向けには月に1000〜1万ドルというのが相場だ。開業2年後のコーチの平均収入は5万〜10万ドルと悪くなく、電話とコンピューターを使用し、在宅でできるフレキシブルなワークスタイルが、人気を呼んでいる理由のひとつだ。

 コーチブームでコーチを養成する企業は次々登場しているが、コーチ養成を会議通話とインターネットを使ってすべてバーチャルで行なっているという点で、コーチユニバーシティはユニークだ。

 コーチユニバーシティ社長のバイラス氏は、自らレナード氏のコーチを受け、今も自ら11人のクライアントをコーチする。バイラス氏は、96年、事業が大きくなりすぎてもてあましていたレナード氏からコーチユニバーシティを購入。それまではボランティアを利用していたが、バイラス氏は従業員を雇い、今では世界中に14人のスタッフが散らばるバーチャルカンパニーを築いている。

同社のコーチ養成プログラムは2年で、その間に36のテレクラス(会議通話を使った授業)を受講する。各テレクラスは、1時間のセッション4コマ(4週間)から成る。実際にコーチとして活躍する人たちが講師となり、一クラス5〜20人で、決まった時間に決められた電話番号に電話をすると、会議通話に参加できる仕組みになっている。ワークブックや自己診断テストはウエブサイトからダウンロードする。受講料は2995ドル。テレクラスに参加する電話代は、受講生の負担となる。

 クラスは、エンパワリング、アドバイスの仕方、開発などのコーチングスキル、人生計画、精神世界(精神道?)などのパーソナルコーチング、起業家や企業の管理職などクライアントのタイプ別コーチ方法、クライアントのビジネスを成功させるためのビジネスコーチング、クライアントの引き付け方、クライアント管理などのコーチングビジネス運営方法から成る。

このほか、受講生は、電子メールによる週刊ニュースレター、クライアント紹介サービス、コーチ名簿への掲載などの特典を受ける。

毎月、新たに70人の受講生が加わり、現在の受講生を含め、これまでの受講者数は計2125人にのぼる。そのうち284人が卒業し、35人が認定を受けている。受講生の2割が海外在住者で、国は30カ国にわたっている。海外在住者の場合、国によってはテレクラスへの参加は電話代がかさむため、オーディオテープが利用され、また、マン・ツー・マンでメンターコーチから指導を受けることができる。

 受講生は、弁護士、会計士、会社重役、会社経営者、俳優、教師、コンサルタント、セラピスト、牧師などさまざまだが、4割が大学院を修了しているという。

受講生の1割が心理学者であるため、心理学者向け専門誌に広告を掲載するが、それ以外は一切広告は行なわず、営業・マーケティング担当者もおいていない。受講生の3分の1がホームページ、3分の1が現存の受講生の紹介、3分の1が雑誌などでの紹介記事を見て入学するという。

現在、CD-ROMやインターネットを使ったコンピューターベースの研修を検討しており、特に海外の受講生のために、オーディオカセットをリアルオーディオでウエブサイトで聞けるようにする予定だという。

今年、売上は200万ドルにのぼり、無借金経営のコーチユニバーシティだが、「受講料を手ごろにするために利益率を抑えざるを得ず、スタッフが働きすぎの状態であるのが問題」とバイラス社長は語る。また、最近、カセットサービスの研究開発に15万ドルを投じたところだが、常に研究開発に投資をし続ける必要があるという。

 新しい職業であるため、現在のところ、コーチに関する規定は一切なく、誰でも自称コーチとして開業することができる。そこで、各コーチ養成企業が独自の認証プログラムを設定しており、コーチユニバーシティも認証プログラムを98年2月より開始した。科目試験合格、コーチング経験、委員会による口頭試問など、認証過程はかなり厳しい。

また、同社では、97年12月に対企業部門のCCUI(企業コーチユニバーシティインターナショナル)を設立。同部門では、企業重役・管理職向けに管理スキルからコーチングスキルへの移行を指導する。今後、大手コンサルティング会社との提携により、2日間のコーチングクリニックとして提供する予定だ。

同社は海外進出にも意欲的で、イギリスに200人、日本に180人の受講生がいる。日本とオーストラリアにはライセンシーを通じ進出しており、ライセンシーはライセンス料とロイヤルティを支払い、教材の翻訳やカスタマイズを負担する。現在、フランス、ドイツ、シンガポールでのライセンス契約も進行中だ。



有元美津世/ベンチャーリンク誌1999年1月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1999
Revised 2/12/99 nu web2@getglobal.com
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