米国ニュービジネス発掘−44−
取引先相手から上司接待まで 接待ゴルフのノウハウ伝授
会社名:Corporate Golf Strategies. Inc.
設 立:1998年
代表者:Will Rhame URL:http://www.execusports.com
仕事上の付き合いでプレーするゴルフは、なかなか難しいものだ。ゲームに集中しては商談にならないし、まして上司相手に勝って機嫌を損ねてしまっては、昇進にも影響しかねない。
フロリダにあるコーポレート・ゴルフ・ストラテジーズは、ゴルフのビジネスへの利用方法を専門にセミナーを行っている。「プレーをしながら商談をするタイミングは…」「上司や顧客とプレーをする際には、わざと負けたり、知ったかぶりをしてアドバイスを与えすぎてはいけない」「カントリークラブでは、全員、特にロッカールームのスタッフにチップを忘れないように」など、多岐にわたる。顧客はおもに大企業の社員が中心だという。
社長のウィル・レイム氏は、20年にわたり金融・マーケティングコンサルタントを務めてきた。80年代に、公認会計士(CPA)向けCPE(継続教育)クラスを提供するCPA
Clubを設立。全米に250のフランチャイズに広げた後、8年前に売却した。昔からゴルフが好きだったレイム氏は、あるとき「ゴルフをビジネス開拓のためにいかに利用できるか」という内容の本を書こうと思いついた。とはいえ、こうしたテーマの本はすでにたくさん出版されているかもしれない。早速この点について調べたところ、意外なことにまったく出版されていないことがわかった。
これは執筆しない手はない。しかし無名の著者では売れない可能性がある。レイム氏は、マスターズなどのキャスターを務めるパット・サマーオール氏を共著者に迎えることにした。
こうして、98年末、「ビジネスゴルフ?ゴルフを通じて関係を築く術(Business Golf: The Art of Building Relationships
through Golf)」を発刊するに至った。 レイム氏は同書を執筆するにあたり、世界中の人から話を聞いたという。とくに、もともとゴルフを接待などのビジネスツールとして使ってきた日本人からは、ギフトの習慣など多くを学んだ。しかし、「その日本人もアメリカでプレーをするときには、エチケットを理解していない」と手厳しい。
この本がきっかけで、レイム氏は、ビジネスゴルフに関するセミナーを開始。主にIBMやメリルリンチなどの大企業の営業担当者やエグゼクティブを対象に、社員旅行などの際に開催する場合が多いという。
メインのセミナーは半日セミナーで、25〜75人を対象にホテルやカントリークラブで行なわれる。「アレンジ」から始まり、「ゴルフ場への到着」「最初のティー」「フェアウエーからグリーンまで」「19番ホール」までをステップごとに説明。どのコースでプレーすべきか、ティータイムの設定、相手の招待、ゴルフ場には45分前に到着し、ギフトを贈呈、どのティーから始め、誰から始めるかなどをポイントごとにチェックする。
ティーでは、「自分のプレーではなく、相手のプレーに専念すること。キャディーに徹する」「ゲスト(招待客)のスコアが芳しくなければ、ゲームから相手の気をそらすよう努める」、フェアウエーでは、「相手の私生活、ビジネスに関する質問をする。相手の事業内容をできるだけ学ぶこと」「常に旗持ちを買って出る」「パットに時間をかけすぎない」、19番ホールでは、「アポを取ったり、次のゴルフの約束をしたり、会社の資料を送るなど、フォローアッププランを練る」「サンキューレターを送る」といったアドバイスが続く。
セミナーの料金は5000ドル。全米だけでなく、海外も含め、月に3〜4回行うという。半日セミナー以外に、10〜400人向き1時間のセミナー(人数により2500〜5000ドル)、ゴルフコースで行う3〜6人向きのオンコースセミナー(2500ドル)を提供している。オンラインコースでは、相手がプレーするときにホールに影ができるように旗を持つなど、レイム氏がわざと間違った行動をとり、受講者に何が間違っていたかを指摘させる。
「私のセミナーを受講すれば、ハンディとスコアが落ちることは請け合う」というレイム氏だが、ゴルフをビジネスツールとして利用する際に一番問題になるのは、人々の競争心だという。「ゴルフのうまい人は、ゴルフがうまければ、仕事が取れると思っている。ゴルフの下手な人は、うまくプレーできないのではないかと心配する。どちらも、自分のことで頭がいっぱいなのです」
つまり、顧客である相手を中心に考えていないということだ。「ビジネスゴルフというのは、ゴルフが上手、下手の問題ではなく、ゲストに対し、どれだけよいホストになれるかということなのです」(レイム氏)
プレーの際のエチケットだけではなく、プレーの仕方で仕事のやり方を判断されるというのだ。
レイム氏は、ゴルフをする人は、皆、同氏のセミナーを受講すべきだという。アメリカでは、昨年だけで、200万人の人が新たにゴルフを始めたといわれ、ゴルフ人口は爆発的に伸びている。しかし、ルールやエチケットを知らない人が増えたために、以前ならば3時間半で回れたコースが、今では5時間半かかるという。
「ゴルフの大衆化は、ゴルフにとってマイナスの影響を与えたと言わざるを得ません」。(レイム氏) ビジネスゴルフに関しコンサルティングを行うのは、レイム氏が知る限りでは、同氏を含め全米に3人しかいない。レイム氏のセミナーは、PGAプロゴルファーの資格維持のためのCPE(継続教育)単位修得に認定された唯一のコースだという。
レイム氏は、コーポレート・ゴルフストラテジーズ以外に、98年に、エグゼクティブ・ストラテジーズを創立。これは、ゴルフだけでなく、あらゆるスポーツのビジネスへの利用を促進しようというものだ。エグゼクティブ・ストラテジーズでは、ニュースレターを発行しているが、現在、20州ほどに編集者がおり、ビジネス開発ツールとしてのスポーツという観点で地元のビジネスリーダーをインタビューして記事を執筆する。編集者には地域ごとにライセンスを授与しており、ライセンス料は、入会金2500ドル、月に250ドルだ。編集者には、証券会社など金融サービス業の人が多いが、編集者にとっては普段会えない人物と会え、新たな人間関係を築くチャンスとなる。
レイム氏は、すでにビジネスゴルフ・セミナーを3人の講師にライセンスしているが、将来は、この形式でセミナーを全米、海外に広げたいという。またセミナーを受講する大企業には、セミナー以外に、金融資産プランニング会社と提携し、金融プランニングサービスを提供している。今後、他の企業と提携し、こうした大企業向けにアパレル、ゴルフ用具などさまざまな商品やサービスを販売していく計画である。
有元美津世/ベンチャーリンク誌2000年8月号掲載 Copyright GloalLINK
1997-2000
Revised 9/1/2000 web2@getglobal.com
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