米国ニュービジネス発掘−42−
経費削減で黒字経営 レース写真のオンライン販売 会社名:PhotoCrazy 設 立:1999年 代表者:Peter Wolf URL:http://www.photocrazy.com カリフォルニアでは、週末にはどこかで必ずランニングレースやスポーツレースなどのスポーツイベントが開催されている。たいていの場合、資金集めを目的とする乳ガン基金、全米ガン協会など社会奉仕団体が主催し、参加者は参加料を支払い、地元の企業がスポンサーとなる。 こうしたスポーツイベントで、参加者の写真を撮影し、オンラインで販売している会社が南カリフォルニアにあるフォトクレージーだ。同社では、デジタルカメラで撮影した写真をウエブサイトに掲載。参加者は、キーワード、イベントのタイプ、州、イベント日でイベントを検索し、自分のゼッケン番号または写真撮影地点の通過時刻で自分の写った写真を探すことができる。写真撮影地点通過時刻を覚えていなくても、スタートした時間とゴールした時間を入力すると、その地点を推測する機能も搭載している。 自分の写真を見つけた後は、写真をクリックし、クレジットカード番号を入れるだけで購入ができる仕組みだ。写真のサイズは財布サイズから8x10インチまで4通りあり、写真を額、コーヒーカップ、マウスパッド、グリーティングカードに加工して購入することもできる。 価格は写真1枚7.50ドルから。発送は注文から1日〜1週間。商品はすべて無条件保証つきで、満足が行かなければ、交換または全額を返金する。 旧東ドイツ出身のピーター・ウルフ社長は、アメリカに移民後、電子機械エンジニアとして働く間にコンピューター機器の開発で7つの特許を取得。その後、カリフォルニアの4万社以上の会社情報データベースを構築し、履歴書やカバーレターを作成して応募企業に送付するというサービスを提供していた。 「自転車が趣味」というウルフ社長は、そのころから自転車レースにたびたび参加、レースの写真を注文していたが、届くまでに何週間、何ヶ月もかかることに不満を抱いていた。友人のバイシクリストらも、写真の購入に興味があり、ニーズがあることはわかっていたため、やはり趣味であった写真技術とコンピューター技術を生かし、デジタルカメラで写真を撮ってオンラインで販売するビジネスを思いついたという。 フォトクレージーの創業資金はわずか2500ドル。コンピューター、カメラ、メモリーチップを購入し、ウルフ社長自ら、2ヶ月ほどでウエブサイトを構築した。同社ではリナックスなどの無料ソフトを主に利用し、サーバも社内で管理している。 「こうした写真をデジタル化し、オンライン化しているのは同社だけ」とウルフ社長は胸を張る。 従来の方法では、まずフィルムを現像し、校正刷りを作成。参加者(顧客)を確認したら、顧客にその校正刷りを送付する。顧客はこれを見て注文とする(注文と同時に校正刷りを返却)という手順を踏んでいた。フォトクレージーの方法なら、こうしたプロセスにかかる時間とコストを半減することができる。 「スピーディなサービス、利便性、高品質が売り物です」(ウルフ社長) 写真を撮影し、時間ごとに整理したプルーフ画像をオンラインで掲載・販売するというビジネスプロセスおよび技術に対して、同社は特許を申請中だ。 同社では、昨年9月に創立以来、週に1イベントのペースで計50イベントの写真撮影を行なってきた。イベント1回あたり1500〜3000枚の写真を撮影。8000枚の写真を撮ったイベントもあるという。月に10000〜15000の写真を撮影し、注文率は3〜15%となっている。前年のイベントの写真に対しても注文が入るあるため、フォトクレージーでは半永久的に写真をオンライン上に掲載している。 各イベントごとにひとりのフォトグラファーが撮影を担当。同社ではフリーランスのフォトグラファーを10人ほど抱えているが、年齢は18歳から78歳と幅広い。フォトグラファーにはイベントごとに定額を支払う場合と、純売上のうち40%の歩合を支払う場合がある。経費はフォトグラファーが負担する。 同社では今年1年で500イベントをカバーする予定だが、そのためにいちばん大きな課題は必要なだけのフォトグラファーを集めることだという。 「十分なフォトグラファーさえ集まれば、今の10倍以上のイベントを扱える」とウルフ社長は意気込む。 フォトクレージーは、同社のサービスを利用するようにイベント主催者に対し営業を行なっているが、写真の購入を希望するイベント参加者がイベント主催者にフォトクレージーを使うように依頼するケースも多いという。 フォトクレージーでは、非営利の主催団体に売上高の10%を寄付しており、非営利団体にとってはお金をかけずに資金集めができるというメリットがある。各イベントのサイトではフォトクレージーのサイトにリンクを張ってもらうため、同社にとってはこれも宣伝ツールとなる。 フォトクレージーは、99年9月に撮影を行なった初めてのレースで、すでに黒字に転じた。土曜日にイベントを撮影し、写真を掲載したところ、日曜日には注文が入ってきたという。有名ECサイトが多額の赤字を抱える中、同社が成功した理由について、ウルフ社長は「@需要の高い商品・サービスの提供、A最新技術の利用、B一般経費の抑制にある」と分析する。同社では、経費抑制のために、就職情報データサービスを提供していた当時の1300平方フィートの事務所を出て、仕事場を自宅に移した。 同社では今後、ウエブサイト上でTシャツ、カレンダー、フレーム写真などの販売を予定している。また、スポーツ愛好家をターゲットとした自転車やスポーツ関連企業の広告掲載を開始し、広告収入による増収を目指す。また、特許取得後はライセンス契約を行なう予定だ。 フォトクレージーでは、現在、主に南カリフォルニアのイベントをカバーしているが、今後は全米のフォトグラファーと契約し、全米展開を行なう予定で、すでに東海岸や中西部のフォトグラファーをリクルート済みだ。 さらに、自転車やランニングレースだけでなく、スケート、野球、サッカーなどのリトルリーグの試合もカバーする予定で準備を進行中。リトルリーグ参加者の親に写真撮影者として有償で写真撮影を依頼し、その親たちが撮影した試合中の写真を、同社がオンラインで販売するのだ。その親にとってはおこづかい稼ぎ、リトルリーグにとっては資金集めの手段ともなる。同社ではこの方法で、海外にも進出を計画しているという。 有元美津世/ベンチャーリンク誌2000年6月号掲載 Copyright
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