米国ニュービジネス発掘−41−
ゲームで楽しく企業研修 研修用ゲーム企画・運営 会社名:Total Rebound 設 立:1990年 代表者:John Wilkinson URL:http://www.totalrebound.com http://www.totaladventure.com ちょんまげのかつらをかぶり、ビニール製の相撲取りのボディスーツを着て、ビニール製の土俵の上で相撲を取る「相撲レスリング」に、鉄のボールの中に人間が入って巨大なピンを倒す「人間ボーリング」など、一見、テレビのバライエティ番組のゲーム大会かと思えるが、これはれっきとした企業研修なのである。 サンフランシスコの郊外に位置するトータル・リバウンドは、企業向けにこうしたイベントを年に1000本企画し、実施している。主なクライアントは、ヒューレットパッカード、シスコ、オラクル、サンマイクロシステムズなど、シリコンバレーのハイテク企業だ。こうしたハイテク企業では社員が40代以下と若く、教室での講義では、エネルギッシュでダイナミックな彼らは退屈してしまうというのだ。 同社の創業者、ジョン・ウィルキンソン社長は、「電子メールやインターネットがコミュニケーション手段となり、人と人が直接触れ合う機会が極端に減ってしまった。皆、他人とのインタラクションを求めている」と参加型研修を思いついた。 カギは、「子供時代に帰ったように楽しみながら、同僚たちと触れ合うこと」。トータル・リバンドが提供するゲームは、体を動かすものだけではなく、チームでプランを立て、チームが協力しなければ達成できないものもある。 たとえば、人気テレビ番組「ファルコンクレスト」をもじった「ファルコンクエスト」では、競争の激しいワイン製造業界で、家族経営のワイナリーが市場獲得を争うという設定だ。参加者はワイナリーチームに分かれ、国際優秀ワイン賞を勝ち取るためにぶどう踏みやワイン試飲ゲームなどを通して競い合う。 こうしたゲームは、「社員間のインタラクションを促進する」「コミュニケーションを向上させる」「リーダーシップスキルを養う」など、それぞれの目的が達成できるように作られている。クライアント企業が、何を目的に、何を達成しようとしているのか、どういった社員が何人参加するのか、体を動かす方がいいのか・・・・・・など、各企業のニーズをもとに企画する。価格は参加者 一人あたり平均100〜150ドル。ゲームを貸し出す場合は、ゲーム、司会役、カスタマイゼーションに対して料金を徴収する。 同社のサービスを利用した企業の9割が同社サービス内容について気に入っており、リピート客の場合、「今度の新しいゲームは?」と聞いてくる場合が多いという。そのため、トータル・リバウンドでは、月に2つのペースで新しいゲームを開発している。ゲームの開発は、別会社のトイズワークスのゲーム開発チームが担当。ウィルキンソン社長が目標や機能などを加える。ゲーム開発の際に重要なのは、1)楽しいものであること、2)見ていても楽しいものであること、3)製作が比較的容易であること、4)目的と一致していること、だという。 ゲームはすべて、社内の職人が鉄や布などを使って製作する。ビニールふくらまし型のゲームは、模倣しやすいので、製造しない。コストがかかるという理由で特許は申請していないが、自社でゲームを開発製造しているのは、業界でも同社のみだ。トータル・リバウンドの北カリフォルニアでの市場シェアは7割にも上る。 開発したゲームはレンタル会社などにも販売している。もちろん競合相手には売らないが、競合相手はあの手この手で同社開発のゲームを手に入れようとするという。 トータル・リバウンドは、ホテル開発事業に従事していたウィルキンソン社長が、90年にバンジージャンプビジネスとして創立。「参加者が自分が飛ぶ順番を待っている間に何かできるように」と、ゲームを提供したのがキッカケとなり、企業のピクニックやイベント向けにゲームを提供するに至った。「一時のブームであったバンジージャンプとは違い、こちらの方が事業として持続性があると見た」(ウィルキンソン社長)。95年に企業向けチーム構築研修事業へと拡大。現在、売上高の半分以上がチーム構築研修事業からなり、残りは企業向けパーティーやピクニックによるものだ。 ビジネスの7割が北カリフォルニアの企業からだが、クライアントには他の地域でイベントも行うため、他の地域でもイベントを実施する。たとえば、クライアントの中には毎年、違った都市で1万8000人の社員向けにイベントを行うソフト開発会社もあるという。 「最大の資産はクリエイティビティ」というウィルキンソン社長は、「成功のカギは、サービス、品質、スタッフ、ミスを犯さないこと」と語る。もっとも大変なのは「質のよいスタッフを見つけ、教育し、維持することだ」という。特にインターネット関連会社が高給で社員を引き抜きあうシリコンバレーでは、優秀なスタッフをリクルートし、維持するのは大変なことだ。 トータル・リバウンドでは、ハワイなどのリゾート地でこうした企業研修を行う別会社、トータル・アドベンチャーを設立した。たとえば、ラスベガスであればギャンブルをテーマにしたものなど、ホテル向けにカスタム企画を提供する。立ち上げから2ヶ月で15ヵ所のリゾートと契約し、今後2年で200ヵ所に増やす予定だ。海外進出も計画中。5年以内に売上高4000万ドルを目指している。 有元美津世/ベンチャーリンク誌2000年5月号掲載 Copyright
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