米国ニュービジネス発掘−17−

インターネットで就職活動 − 学生と企業のマッチング −


会社名:JobDirect,Inc.
設 立:1995年
代 表: 
Kevin E. Gage (CEO)
売上高:800万ドル(98年予測)
従業員: 23人
URLhttp://www.jobdirect.com

 インターネット時代の今、就職活動にインターネットを利用することは常識となりつつある。現在、アメリカ企業の20%、ハイテク企業の67%がリクルートにネットを利用し、2002年には求職の95%がインターネット上に掲載されると言われている。
  WWW上の就職斡旋サイトは何万にのぼり、オンラインリクルート市場は、97年の4800万ドルから2002年には4.6億ドルに伸びると予測されている。今後、競争は激化し、将来、市場を牛耳るのは一定の分野・業界に特化したサイトと見られている。
 そうした中、いち早く新卒にターゲットを絞ったのが、コネチカットにあるジョブダイレクトだ。同社では、大卒、大学院卒向けに、卒業後の就職先から、インターンシップ、夏休みのアルバイト、ボランティアまで、初級レベル職の斡旋を専門としている。
 登録学生数1400校5万人、「ウエブ上で検索可能な最大の学生の履歴書のデータベース」を自負する同社のサイトでは、採用企業は、州、大学、専攻、キーワードなどで学生の履歴書が検索できる。たとえば、「○○大学で成績3.0以上、フランス語の会話力があり、シカゴで働きたい学生」といった条件で検索が可能なのだ。
 95年当時、学生対象のリクルートウエブサイトはすでに存在したが、情報掲載のみで、マッチング機能を持たせたものはジョブダイレクトが初めてだった。

 同社は、当時、大学3年生だったレイチェル・ベル氏とサラ・サットン氏によって設立された。小学校時代からの友人である二人は、卒業後の進路を模索している間に、このビジネスアイデアを思い付いた。「当時、就職に関する情報源といえばディレクトリーなどの印刷物が主だったが、何千もの職が掲載されていて、そのどれも自分の希望するものではなかった」という従来の就職活動プロセスへの不満から生まれたアイデアだ。「学生にとって、就職活動におけるストレスを最小限にしたい」と、ちょうどインターネットがブームとなりだした頃、学生と企業のマッチングにインターネットを利用することを思い立った。
 インターネットの1年は、オフライン世界の数ヶ月にあたるといわれ、スピードが速い。インターネットの世界では、チャンスはすぐにつかまなければ失われる。「大学卒業まで待っていては遅い」と二人は大学を中退し、事業に専念することにした。
家族や友人から借金をし、2万ドルでスタート。プログラミングやビジネス経験のない二人は、事業計画を実行するため、外部から経営陣を採用した。創立後まもなく、社長兼最高運営責任者に同社初の30代社員、ロブ・フォード氏、97年には、会長兼最高責任者に銀行で長年の経験を持つケビン・ゲイジ氏を迎えた。

 学生の視点に立った同社では、これまでの人材募集活動とは違ったクリエイティブな方法を次々に考え出した。
 「ジョブドライブ」プログラムでは、カスタム設計のRVで地域のキャンパスを訪問し、学生に履歴書の登録を勧誘する。カラフルなデザインのRVには、ラップトップ15台、イーサネットでつながれたサーバなど最新の機器が搭載されている。 RVは、東海岸、西海岸、カリフォルニアに3台あり、学生を中心とした契約スタッフが管理している。
 ビデオカメラやデジタルカメラを用い、ツアー状況をウエブサイトでも紹介し、97年から98年にかけて全米の300校を訪問した。掲載履歴書の4割が、ジョブドライブの訪問した大学の学生によるものだという。プログラムは、学生と大学就職関係者の間でのブランド構築に大いに役立っている。
 ツアーは、オラクル、サンマイクロシステムズ、ヤフーなどの企業がスポンサーとなり、コンピューターなどの機器、資金、サービスの提供を受けている。
「学生代表プログラム」では、全米各地の大学175校で260人の学生代表が、ジョブダイレクトをクチコミで宣伝する。

 この他、同社では、企業によるキャンパスでの就職説明会も企画する。また、就職説明会や人事関連会議に出展するときには、サーフボードを持参するなど従来のリクルート会社との差別化に工夫をこらしている。
 学生に対するサービスは無料で、履歴書にアクセスする企業から料金を徴収する。料金は、募集人数、ユーザ数、対象大学数などにもとづき、月に1000〜12000ドルとクライアントによってさまざまだ。クライアント起業には、必ず専属の担当者がつく。複数の事務所に勤める採用担当者間のコミュニケーションを促進するため、エクストラネットのような企業内コミュニケーションシステムを構築する場合もある。

 現在、クライアント企業100社以上、求職数15000以上、スポンサー企業は5社にのぼり、クライアントには、IBM、インテル、プライスウォーターハウス、ランダムハウスなどの大企業が名を連ねる。
 企業にとってジョブダイレクトを利用するメリットは、インターネットの利用による社員採用の効率化と採用に関する広告費や旅費などのコスト削減である。また、キャンパスでの面接前に、前もって応募者を絞ったり、ジョブダイレクトの請求システムを使い、採用コストをモニターすることも可能である。  「当社は、情報を収集し、それをニーズに合わせて配布するデータベース会社なのです」と同社のマーケティング担当副社長、ティム・キャレイ氏は語る。

同社の目標は、今後、激化すると思われるオンラインリクルート市場で、学生と採用企業の間で、ナンバーワンのブランドとなることだ。  インターネットを通じ、海外の学生による登録も全体の27%に達しており、海外市場への進出にも積極的である。すでに数社から海外進出の話を持ちかけられており、今年中には具体的な計画が固まる予定だ。


有元美津世/ベンチャーリンク誌1998年5月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1998

Revised 7/1/98 web2@getglobal.com

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