会社名: Girl Tech LLC
設 立: 1995年
代 表: Janese Swanson
ホームページ: http://www.girltech.com
「なんで、女の子のオモチャには、男の子のオモチャみたいにかっこいいのないの?」という8才の娘の質問に答えるため、女の子向け電子オモチャを開発する会社を設立した女性がいる。
「女の子のオモチャは、40年前とほとんど変わっていない。男の子のオモチャは、アクション、冒険、ロールプレーに満ちているのに、女の子のオモチャといえば、受け身で、人の世話をする依存心の強い小さな女の子という伝統的な役割、女性の生き方の一面だけを押し付けたものばかり。男の子と同じように、女の子も、独立心、創造性、探究心を育て、無限の可能性を信じさせてくれるようなオモチャを必要としている」とスワンソン社長は、ガールテック社の設立動機を語る。
長年、オモチャ業界で働いてきたスワンソン社長によると、「女の子向けには、ピンク色のかわいらしいオモチャしかないことは一目瞭然。現在、アメリカの120億ドルのオモチャ市場の約85%が、男の子対象のオモチャで占められている」
組織とリーダーシップ学で博士号を持つスワンソン社長の博士論文テーマは、「ゲーム遊びとテクノロジーにおけるジェンダーによる違い」 スワンソン社長の調査によると、ゲームセンターのビデオゲーム100種のうち、92%に女性のキャラクターは登場せず、登場する8%のうち6%が、かよわきヒロインだったという。「女の子は、男の子ほどビデオゲームで遊ばず、その分、テクノロジーの分野で劣る。これは、ソフトの設計者がほとんど男性で、女の子が好むようなゲームを開発していないのが一因。殺し合いばかりでないゲームがあれば、女の子もビデオゲームで遊ぶ」と言い切る。
数少ない女の子向けビデオゲームは、ショッピングセンターでの高級ブランド服の買物、化粧、男の子の気を引くなど、伝統的ステレオタイプに基づいたものだ。
スワンソン社長は、以前、勤めていたソフト開発会社で、女の子も男の子も楽しみながら地理を学べるコンピューターゲームの大ヒット商品を開発。独立してすぐに設立したキッド・ワン・フォー・ワン社では、手のひらサイズのボイス・レコーダーなど、開発したオモチャを大手オモチャメーカーとライセンス契約した。しかし、スワンソン社長が、どれだけ中立なオモチャを開発しても、一旦、メーカーの手にわたると、男の子用オモチャに様変わりしてしまう。オモチャメーカーから、開発したオモチャやビデオゲームを男の子に受けるよう変更するように言われるのはしょっちゅうだ。
ソフトウエア会社の言い分は、「女の子向けの製品は、女の子しか買わないが、男の子向けに作れば、女の子も買うかもしれないから、男の子向けに作った方がいい」というもので、「女の子は、ビデゲームやコンピューターでは遊ばない」という固定観念が根強い。
こうした世の中の性別に基づく偏見をなくし、女の子にも幼い頃からテクノロジーに親しませ、社会の女の子に対する見方、女の子のセルフイメージを変えるのが、ガールテックの使命だ。しかし、こうした社会的使命だけでなく、女の子をターゲットとするのは、大きなビジネスチャンスでもある。女の子が、毎年、消費する金額は、計450億ドル以上。男中心のゲーム市場は、飽和気味で、これ以上シェアを広げるには、女の子市場を開拓するしかない。
同社では、アメリカ第二のオモチャメーカー、ハズブローと提携し、リモートコントロールを使って鍵の開閉ができる日記帳、ボイスレコーダーのついたロケット・ペンダントなどのオモチャを開発。これらの製品は、現在、テストマーケティング中だ。
オモチャ以外にも、ガールテックでは、CD-ROMや書籍の出版、アニメやテレビ脚本の製作、ホームページ作成など、女の子のための総合マルチメディア会社を目指している。今年始め、出版した女の子のためのインターネット総合ガイドブック「テックガールのインターネット・アドベンチャー」では、女の子に友好的なウエブサイト200を紹介。女の子たちが自分でホームページを作成できるソフト「マイ・ホームページ」もついている。第二弾「テック・ガールのアクティビティ・ガイド」では、コンピューターやインターネットだけでなく、静電気を作って遊ぶ方法や蒸気で金属を砕く方法など、テクノロジーの日々の生活への取り入れ方を紹介している。ガールテックでは、同書を学校の教材としても売り込む予定だ。
近日発売予定の「ガールテックのデスクトップ・ツールキット」は、「マイ・ホームページ」と電子カレンダーのついたスクリーンセーバーのセット。スクリーンセーバーは、日頃、「かわいい」「やさしい 」と言われがちな女の子たちに、「賢い」「強い」「クリエイティブ」「冒険好き」といった言葉を並べていろいろなデザインができるようになっている。
同社の要であるホームページには、30ヶ国以上から1日15万のアクセスがあり、一大ネットコミュニティを形成している。
ホームページでは、女の子に友好的なサイトが検索できるサーチエンジンを搭載。男女の遊び方の違いなどの研究結果や、メディア、親、教育者、子供たちへのアドバイスも掲載している。
また、インターネットの利用を奨励するために、ネットサーフィン度に応じ、女の子たちにワッペンを発行するプログラムも開始予定だ。隔月発行予定の雑誌「ガールジン」には、実際にホームページに寄せられた女の子たちからの質問をもとにした記事を掲載する。
さらに、主人公のテックガールが様々な冒険をする映画やテレビシリーズの脚本も完成しており、現在、ハリウッドに売り込み中だ。
「既存のステレオタイプに挑み、本当に女の子が欲しているものをオモチャ業界、メディア、親、学校、子供たち自身に伝え、社会を変える」という大きな目標に向け、将来はオモチャの開発だけでなく、製造まで担いたいとスワンソン社長は考えている。
有元美津世/ベンチャーリンク誌1997年月 8掲載 Copyright
GloalLINK 1997
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