顧客向けに各種カードを送付
カード送付代行サービス
電子メール、インターネットなどテクノロジーが普及し、人間関係が希薄になりつつあるハイテク時代の今こそ、反対に人と人とのふれあいが求められるといわれる。まさにそうしたパーソナルタッチを加えることによって、急成長している会社がニューメキシコ州アルバカーキーにある。アメリカでは、誕生日、結婚、出産などの個人的行事やクリスマスなどには、カードを送付するのが通例だ。ニューメキシコ州アルバカーキーのカードセンダーズ社では、企業・事業主に代わって、バースデーカード、サンキューカード(礼状)などのカードを作成し、顧客や従業員に送付するサービスを行なっている。
専有ソフトに、顧客から入手した送付先リストと送付日を入力し、自筆のメッセージとサインはスキャン。印刷は一般に印刷所を利用するが、枚数が少ない場合、インクジェットプリンターで印刷することもある。送付日が来るとソフトが知らせるようになっている。
顧客からは、カード1枚1.50〜2.25ドルと郵送料を徴収する。注文数は最低100枚。粗利は55~50%だ。
= カード送付サービスの利用者は、歯医者、保険代理店、小売店、病院、自動車ディーラー、銀行、人材派遣会社、弁護士などさまざまで、患者や顧客向けバースデーカード、社員への勤労感謝のカードなどに利用される。カードセンダーズ本社の場合、最大の顧客は銀行で、160の銀行員がそれぞれの顧客にメッセージとサイン入りカードを送付するのを代行する。
カード送付は、新顧客開拓よりも既存の顧客をターゲットとしている。既存顧客の維持コストは、新規顧客開拓コストの5分の1といわれ、「カード送付で、顧客や従業員とのパーソナルな関係維持を効果的に達成できる」と社長のロバート・ボバリー氏はいう。
カードセンダーズは、もともと、1985年にアルバカーキーに住むいとこ同士の女性2人が在宅でパートタイムで開始した。当初は医師に代わって、患者に手書きのカードを送付していたが、注文が増え、数ヶ月後には2人は仕事を辞め、カードセンダーズに専念。手書きでは限界があるため、2人はソフト開発会社にソフトの開発を依頼。このソフトは、誕生日や記念日などの日にち限定の大規模なメーリングに対応しているという点で非常にユニークだった。大手DM会社は、1日に大量に送付される大規模なメーリングのみ扱い、誕生日など日にちが限定されるものは扱わない。
初年度、23000枚だったカード送付数は、90年には10万枚に達した。創業者2人は事業が大きくなりすぎ、もてあましていたころ、美術カタログの出版業を営んでいたボバリー夫妻が新規ビジネスを探しており、90年にカードセンダーズを購入するに至ったのだ。
夫妻は、従業員を雇い、事務所を借り、ソフトのライセンスを開始した。フランチャイズではなく、ライセンスを選んだ理由は、50州すべてでFC登録をするには大きな法的費用が必要だからだ。FCと違い、ライセンスの場合、1)ライセンシーはカードセンダーズの名前を使えない、2)ロイヤルティは徴収できない、3)ラインセンシーの地域割当ができない、4)研修などはライセンサーが出向くのではなく、ライセンシーが本社にやってくる、などの法的規制がある。つまり、ライセンシーは独立した事業主で、カードセンダーズではなく、さまざまな名前でカード送付事業を営んでいる。カードセンダーズでは、125のカード供給業者を推薦しているが、ライセンシーに利用を強制することはできず、どのメーカーのカードを使うかは、ライセンシーの自由である。
同社では2年間にホームページを設けたが、新しいライセンシーの半分がそれを見てやってくる。ライセンシーの受け入れには、念入りな選考過程があり、申込者の約2割をことわるという。
「簡単にお金儲けをしようとしている人にはつとまりません。大事なのは、経歴ではなく姿勢です」 営業経験のない人のほうが、カードセンダーズの勧めるマーケティング方法を素直に採用するため、滑り出しは順調だという。
同社のマーケティング方法とは、地元のビジネス社会で知られるため、ビジネス団体に属するなどしてネットワークを作るというものだ。「このビジネスでは、どの商売においても大切な顧客リストをお客さまからいただかなければならないのです。信用の確立がまず第一」(ボバリー社長)
ライセンシーの経歴は、教師、弁護士、トラック運転手、秘書、主婦などさまざまで、定年退職や失業をした元管理職も多く、なかには大学新卒で成功している例もあるそうだ。ライセンス料は、個別、グループ形式など研修の形態によって、ソフト込みで6900〜8500ドル。このほか、コンピューターなどの機器の購入を含め、立ち上げには計1万ドルが必要だ。ライセンシーのほとんどが貯金などの自己資金で立ち上げるが、同社では、12〜18ヶ月の分割払い制度も設けている。ほとんど全員が立ち上げ時は在宅で始めるという。
同社では、研修の一環として、1年間、電話による無料ダイヤルフリーサポートを提供している。現在は、1年後も、ダイヤルフリーではないものの無料で電話サポートを提供しているが、将来は有料にする予定だ。このほか、1年間ソフトの無料アップグレードや年次大会なども含まれている。 同社では、現在、アルバカーキーで230事業者の顧客のために、年20万枚のカードを送付し、アメリカ40州とカナダに140事業者のライセンシーを抱えている。売上の割合は、地元のカード送付ビジネスが3分の1で、ライセンシング事業が3分の2。急激に伸びているのは後者だが、カード送付サービスの方も年に3〜4割の伸びを見せている。
「どのように両方を続けていくかがいちばんの課題。長期的にはライセンシングを重視することになるが、どちらを優先すべきか検討中です」(ボバリー社長)
同社では、ライセンシーが各自カスタマイズできる共通のウエブサイトを開発し、ライセンシーの顧客開拓を支援する予定だ。また、ライセンシーらが情報交換や質問をできるよう、オンライン掲示板の設置も検討している。
今後は年に50-75のライセンシーを加え、同時にライセンシーにさらに多くのサービスを提供していく計画だ。また、海外への進出も検討しており、最終的にはカードだけでなく、ファックス、手紙、はがき、電子メールを利用したパーソナライズドコミュニケーション分野での権威となることをめざしている。