米国ニュービジネス発掘−4−

あのビル・ゲイツも利用する

世界最大のバーチャル書店


会社名: Amazon.com.Inc
設 立: 1994年
代 表: Jeff Bezos
ホームページ: http://www.amazon.com
従 業 員: 110人
売 上: 未公表

 他の業界と同様、店舗の大型化、カテゴリーキラーの進出が目立つアメリカの書籍業界で、インターネット上のカテゴリーキラーとして登場したのがバーチャル書店のAmazon.comだ。

 会社名をアマゾンと名づけたのは、世界最大の書店にふさわしく、世界最大の川にちなんでのこと。同社が、ウエブ上で扱う書籍数は110万。全米最大の書店バーンズ&ノーブルでさえ17.5万であるから、その6倍以上の取扱量である。「110万もの書籍をおける書店などない。通販カタログでも無理だ。当社で扱っている書籍をカタログ化したら、ニューヨークの電話帳7冊分の量になる。これだけの書籍を扱えるのはバーチャル書店だけ」と社長のベゾス氏は自負する。

 「オンラインで商売をするには、オンラインでしか提供できないものがなければならない。特にオンラインでは、スピードの遅さやサーバーエラーなどの問題があり、そうしたデメリットを補うだけの価値を提供する必要がある」

 同社は、数少ないインターネット・ビジネス成功例として全米で注目を集めている。同社の売上は非公開だが、96年度、1000万ドルを超えたと見られている。同年の月間成長率は34%。利益よりも、まず市場シェアの拡大を狙うベゾス社長は、「もしここ2年以内に利益を出せれば、偶然としかいいようがない」と言う。設立当初、出資してくれた家族親戚や友人知人らには、「5年間は利益は出ないものと思ってくれ」と伝えたという。

 元エンジニアのベゾス社長は、コンピューターシステムの開発に携わった後、ウォールストリートでヘッジファンドを担当していたが、WWWが2300%のスピードで成長していることに注目。書籍、音楽、雑誌、コンピューター製品など、ウエブ上での販売にふさわしい商品を20点選び、その中から書籍と音楽に絞り込んだ。結局、書籍を選んだ理由は、数の多さと業界構成。音楽30万曲に対し、書籍の数は130万。大手レコード会社6社が牛耳っている音楽業界に対し、書籍業界では、最大手のバーンズ&ノーブルズでさえ、業界全体の12%のシェアを占めるにすぎない。

 また、本拠地にシアトルを選んだ理由は、ハイテクに通じた人材が豊富であること、オレゴン州にある大手書籍流通会社に近いこと、そしてよい人材を引きつけるための住みよい環境だ。

 94年夏、ベゾス社長は、社員4人とともに、自宅のガレージにコンピューターを設置し、まずAmazon.comの立ち上げに必要なソフト開発に取り組んだ。

 昨年、シリコンバレーのベンチャーキャピタル会社から80万ドルの出資を受けたが、これは、同投資会社の史上最高と言われたネットスケープ社への投資額の2倍にあたる。

 ベゾス社長が新しい資金で雇ったのは、管理者や事務員ではなく、プログラマーだ。同社の机は、上塗りをしていないドア板を張り合わせたもの。ベゾス社長のコンピューターのモニター台は、古い電話帳である。同社の資金のほとんどが、ウエブサイト開発や雑誌広告に費やされる。「当社では、お客にとって大事なものにお金を費やすんです。つまり、世界で最高のプログラマーやサーバーに」

 「当社のウエブサイトは、ウエブサイトというより店舗なんです」という同社が、サイトを開発するにあたり一番重要視したのは、「お客が店内で何をしたいか」ということだ。

 同社のサイトでは、サーチエンジンを使って目当ての本が容易に探せ、注文、質問が簡単にできるようになっている。カスタマーサービスの9割は電子メールで行なわれ、110人の社員のうち14人が、顧客からの電子メールへの回答を専門としている。

 注文から配達までの期間は、平均して3ー5日。設立当初、5割だったクレジットカードによる支払は、今では8割に達している。

 マイクロソフトのビル・ゲイツ氏もAmazon.comを利用するが、その理由として「利便性、豊富なセレクション、サービス」を挙げたという。同社の成功の秘訣は、あと、これに価格が加わる。同社では、ベストセラーは3割、その他は1割、計30万以上の本を値引きしている。こうした値引きが可能なのは、一般書店よりコストが低いからだ。同社の年間在庫回転率は、一般書店の3ー4回に比べ、150回にのぼる。P>  RCFが、投資先を選ぶ基準は、1)製品が既に完成していること、2)市場が既にあること(新たに市場を教育するといった製品は不適切)、3)粗利が大きいこと(少なくとも50%)。株式資本とは異なり、市場や売上、成長率が大きいというのは、必要条件ではない。売上が確実に予想できる方が重要である。

 同社では、投資先を選考する際に、まず電話で15分も話をすれば、さらに検討すべきかどうか判断がつくという。最終選考段階では、元FBI捜査官の私立探偵を雇い、たとえばアル中歴はないかなど、運転歴や法廷記録まで、経営者の経歴を詳しく調査する。また、リスク軽減のために、ソフトや技術などの知的資産に対し担保権を取得する。

 RCFでは、310万ドルを個人投資家から集めているが、投資家の4分の3が起業家であるという。「起業家のことを本当に理解しているのは起業家。自分でビジネスを起こしたことのない投資家には、売上に対するロイヤルティベースという考えが理解できないようです」 同社では、ロイヤルティの23%を管理費として徴収し、残りの77%は有限パートナーたちに分配する。返済額が投資額の3倍にのぼると、同社の取り分が30%、有限パートナーへの配分が70%となる。

 「投資家は、投資する会社を自分の目で見てみたいというものなので、ボストンで、カリフォルニアの会社への投資家を見つけるというのは難しい」 そのため、同社では、全米各地で投資家を見つけるため、1年以内にフランチャイズ展開を考えている。同社には、すでに南アフリカから、同様のキャピタルファンドを始めたいという問い合わせが来ている。日本からも、同様のファンド設立に関する問い合わせを歓迎するということだ。


有元美津世/ベンチャーリンク誌1997年 5月 掲載  Copyright GloalLINK 1997

Revised 6/10/97 web2@getglobal.com

「米国ニュービジネス発掘」インデックスへ