インターネットでグローバルマーケットに発信
インターネットの登場で、 大企業ばかりでなく、中小企業やSOHOでも、グローバル市場をターゲットにビジネスができるようになったことは言うまでもありません。現在でもインターネットを利用して錦鯉、日本茶、伝統品、アニメなどを海外に向けて販売しているスモールビジネスがたくさんあります。また、ある程度の規模の企業になると、たいてい英語のウエブサイトを持っていて、少なくとも会社案内などは英語で掲載しています。
一方、まったく英語のページなどは載せていないのに、「突然、海外から注文が舞い込んだ。どうやって料金を支払ってもらえばいいかわからない」といった悩みもよく聞かれます。ご存知のようにインターネットはオープンなプラットフォームです。日本国内向けに日本語でサイトを出しているからといって、海外から問い合わせがないとは限らないのです。
インターネット人口は、これまでインターネットをリードしてきた北米での伸びが鈍化し、アジアやヨーロッパで急増しています。アメリカのeビジネスは次々にグローバル市場を狙い始めており、多言語でウエブページを提供するところが増えています。日本にもどんどん進出してきており、日本のeビジネスも、アメリカのeビジネスによる侵食が進む日本市場だけをターゲットにしていたのでは、将来的に生き残りは難しいかもしれません。そしてグローバル市場に進出するには、少なくとも英文サイトが必要であることはいうまでもありません。
効果的な英文ウエブサイトとは
海外に売り込むためには、インターネット上の共通言語である英語、またはターゲットとする国の言語で売り込む必要があります。実際、英語のホームページを出している日本のサイトは少なくありませが、たいていが日本語版の直訳となっており、いったい何が言いたいのかわからないものがたくさんあります。通じない英語が使われている場合も多いのですが、言葉の問題だけではなく、論理の組み立て方や説得方法が日本語のままなのです。
たとえばアメリカのテレビ・コマーシャルは、その製品がいかに優れているかをしつこいくらい説明したものが多いのです。視聴者に自社の製品の優位性を論理的に訴えようとするからです。一方、日本のコマーシャルは、情感に訴えるものが多く、眺めのいい風景ばかり映し出され、いったい何のコマーシャルだろうと首をひねっていると、最後にやっと会社名が出てくる、といったものが少なくありません。
会社案内やパンフレットも日本語版をそのまま英語に訳したものをよく見かけますが、それらを見た欧米人の反応はたいてい「いったい何をしている会社かわからない」というものです。日本の会社案内には、経営者の哲学や精神を強調したものが多いのですが、カタログじゅう哲学だらけでは、具体的な事業内容は伝わりません。欧米の会社案内は、会社の使命(ミッションステートメント)が冒頭に登場した後は、自社のユニーク性や具体的な事業内容の説明に入るのが一般的です。
英語やその他の外国語でホームページを作成する場合、日本語の論理に基づいて書かれたコピーのことはいったん忘れたほうがよいでしょう。英語のものは初めから英語で書くことが必要なのです。また、日本語のサイトにある情報をすべて英語に訳す必要もありません。日本語のウエブページと英語のウエブページに掲載されている内容は異なっていてよいのです。ターゲットが違うのですから、強調する部分が違って当然といえるでしょう。
英文サイト構築の目的
日本語、英語にかかわらず、ウエブサイトを立ち上げる前には、何のために立ち上げるのかを明確にする必要があります。「他社が英文ページを出しているからうちも…」「英語のページがあったほうがかっこいいから」では困ります。
ウエブサイトというと、とかくオンライン販売を思い起こしがちですが、ウエブサイトは商品を販売するだけのものではありません。製品やサービスの宣伝、会社のPR、顧客サービス、顧客の選別、IR、プロセスの効率化など、様々な用途に利用できます。しかし、たとえ売上や利益をあげる目的でなくても、投資に対するリターンが得られなければなりません。英文ウエブサイトの構築のために予算を組むにあたって、サイトを構築することによってどのような価値を会社にもたらせるのか、その価値はコストに値するものなのかを見極める必要があるのです。
本書では、Chapter 1 で英文サイト構築要素とそこで使われる英語表現、Chapter 2でウエブサイトを海外市場に向けて売り込む方法、Chapter
3ではeビジネスで使われる英文メールの文例を紹介しています。 本書が、グローバル市場を目指す日本の企業や起業家が価値ある英文サイトを構築し、効果的に活用する一助となれば幸いです。
本書の執筆を手伝ってくれた孝くん、Mike Myers、そして大変な編集作業をこなしてくださったジャパンタイムズの道又さんに感謝いたします。
2001年1月
有元美津世
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