はじめに
あるビジネスウーマンの交流会に出席したときのことだ。 私が「履歴書を一枚書くのなんて簡単だと思っている人が多いが、
履歴書を書くというのは長時間の準備を要する一仕事だ」と言ったところ、 あるアメリカ人女性は「その通り。私が何十年も職を変えなかったのは、
履歴書を書き直すのがいやだったから!」と語った。
彼女の言葉が語るように英文の履歴書を書くというのは、 英語のネイティブ・スピーカーにとっても大変なことなのだ。
本書で詳しく説明するが、英文の履歴書というのは、日本の履歴書の ように市販の定型のものがあって、そこに必要事項を箇条書きで
記載するといったようなものではない。自分でフォーマットを考え、 自分という“商品”を売り込むために、戦略的に書かなければならない。
私は雇用者として、多くのアメリカ人から履歴書を受け取ってきたが、 その中で優れているといえる履歴書はほんの数枚である。毎年、何十冊と
いう履歴書の書き方に関する本が出版されているアメリカでさえそうなのだ。
さらに、履歴書の書き方は、時代の趨勢とともに変わっていく。ハイテク 時代の今、履歴書を電子メールで送るケースが増えており、履歴書を機械で
スキャンする企業も増えている。媒体が紙からサイバースペースに変わったの だから、当然、そのフォーマットも変わる。常に、時代の流れにあった履歴書の
書き方を学ばなければならない。また、就職活動にホームページやニュース グループなどインターネットが使われるようにもなっている。コンピューターすら
使えないようでは、就職活動さえできなくなってきているのだ。
本書では、こうした時代の流れを反映しながら、日本国内でしか通用しないような
日本式英文履歴書ではなく、実際にアメリカで使われている履歴書の書き方を紹介 している。海外で就職しようという方々にもお役に立てれば幸いである。
1996年11月 有元美津世
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