米国ニュービジネス発掘−34−

レシピを提供して製造外注
バーチャル経営チーズケーキ店

会社名:Chef Sanborn, Inc.
設  立:1997年
代表者:Bruce Sanborn
URLhttp://www.chefsanborn.com

  日本でも既存のケーキ販売店がインターネットでチーズケーキを販売し、消費者の人気を得ているが、自分のレシピーをもとに、チーズケーキの製造を外注し、完全なバーチャル運営でインターネット上でチーズケーキを販売しているシェフが南カリフォルニアにいる。

 シェフ、ブルース・サンボーン氏は、200キロ離れたサンタバーバラの提携ベーカリーにレシピーを提供。チーズケーキの製造から注文受付、発送までのすべてをそのベーカリーに任せている。

 ホームページでは、「オリジナル」「チョコレートブリス」「ピーカンパラダイス」の3種類のチーズケーキを販売。価格は「オリジナル」が24.95ドル、その他が27.95ドルだ。オンラインで希望するチーズケーキを選び、発送先の州または地域を入れると、自動的に送料が計算される。発送はUPSまたはフェデラルエキスプレスによって行なわれ、たいていの地域には2日で届けられる。ギフトの場合は簡単なメッセージを入れたカードを添えることもできる。

 注文はオンライン、フリーダイヤル、およびファックスで受け付け。支払はクレジットカードまたは小切手を受け付けている。オンラインで入力された注文は、自動的にChef Sanbornとベーカリーに電子メールで送付される。オンラインでクレジットカード番号を入力したくない顧客は、フリーダイヤルで注文したり、注文用紙をダウンロード、印刷してファックスすることもできる。

 チーズケーキというのは季節商品で、母の日、感謝祭、クリスマスなどに注文が集中する。昨年のクリスマスには、約2000個を出荷したという。

 ChefSanbornでは、ギフト券の販売や、クライアント向けギフト用に企業への販売も行なっている。企業顧客は売上全体の約25%を占めており、特にクリスマスシーズンなどは、一度に30個といった大型注文が入ることが多いという。個人からの注文は全米から寄せられるが、企業顧客は主に地元の企業であり、Chef Sanbornでは営業員を雇い、地元企業への営業に力を入れている。

 ベーカリーからは、2週間ごとにチーズケーキの販売数の報告をかね、請求書が送られてくる。Chef Sanbornでは販売されたケーキ一個あたりのコミッションをベーカリーに支払う。材料費などはベーカリー側が負担し、Chef Sanbornでは着手金などは一切支払っていない。つまり、ベーカリーに支払うのは売上に応じた歩合のみ。おかげで大した利益は出ていないものの、赤字を出すことはない。

 ベーカリーは、食品見本市などで知り合ったベーカリーをいくつか面接して選んだという。当初、別のベーカリーと提携したが、うまく行かず、最近、このベーカリーに変更した。ChefSanbornのチーズケーキは冷凍型で、冷凍ケーキの製造、保存、発送に熟練していることが条件だった。このベーカリーは低カロリーの冷凍チーズケーキを製造しており、その経験と、市場で競合しないという点が決め手となった。もちろん、サンボーン氏のレシピーは勝手に利用しないという条件が契約書に盛り込まれている。立ち上げの際、ケーキがこげるなどの問題が生じたが、大した問題ではなく、提携関係は非常にうまく行っているという。

 初めてケーキを焼いたのは4歳のときというサンボーン氏は、アメリカ料理専門学校を卒業。ニューヨークのレストランで調理責任者や南カリフォルニアのレストランで調理長を務めた経験を持つ。シェフとしてレストランに勤務するかたわら、20年間、家族親戚、友人知人、地元のレストラン向けに、自宅の台所で焼いたチーズケーキを販売してきた。自分で焼かずにベーカリーに外注するのは、今回が初めてだ。

 サンボーン氏は、コンサルティングを行なう妻がホームページを出して宣伝しているのを見て、インターネットでの販売を思いついた。夫妻には7歳と2歳の子供がおり、ちょうど自宅で子供の面倒を見ながらできるということで開始に至った。サンボーン氏が家で子供の面倒を見ている間に、ベーカリーがケーキを焼いて発送し、ビジネスを展開してくれているというわけだ。

 ウエブサイトの開発には8000ドルを費やし、シアトルにあるウエブ開発会社に依頼した。今年中に、さらに25000ドルを投じウエブサイトを大幅に拡大する予定だ。現在3種類しかないチーズケーキの種類や一サイズしかないサイズのオプションも増やすつもりだという。

 将来的には、「こうした食事の後のデザートには、このチーズケーキが合う」といった献立やレシピーも紹介したり、食事に関する情報を加え、食品ポータルを目指す。 「私のチーズケーキを味見すれば、おいしいと言わない人はいない」と自負するサンボーン氏。インターネットで販売する際の一番の問題は、「味見をしてもらえないこと。見本市などであれば、実際に味見をしてもらえ、そのよさを納得してもらえるのだが」という。味見ができない分、チーズケーキの写真が大事になってくる。ホームページでは、ベーカリーの厨房や作業風景の写真も掲載し、顧客の安心感を得られるよう努めている。

 今後、大学などの大口ユーザーへの販売、通販カタログや量販店などへの販売を推進していく予定だ。現在、日本や東南アジアの流通業者からも問い合わせが来ているという。


有元美津世/ベンチャーリンク誌1999年10月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1999
Revised 10/26/99 web2@getglobal.com
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