「アメリカ発購入者主導型サイト」


アメリカ発

購入者主導型 逆ショッピングサイトは定着するのか?


 インターネット上には、いまやオンラインストアやオークションサイトがあふれかえっている。そのなかで、買い手が自分の希望する商品やサービスを探し出すのは至難の業。そこで、アメリカでは、買い手が希望価格や条件を提示してほしいものを見つけることができるという“逆ショッピングサイト”が人気を集め続々といろいろなビジネスモデルが登場している。

 98年に登場したPriceline.comは、航空券やホテルを買い手が価格を指定して購入するという、いわば逆オークション方式で話題を呼んだ。買い手は、オンラインで目的地、日程、価格などの希望条件、およびクレジットカード番号を含む個人情報を入力する。Priceline.comでは、それを受け入れる航空会社やホテルとマッチングするというものだ。航空券の場合、時間、フライト、航空会社の指定はできない、ストップオーバーありといった制限はあるものの、低料金を求める、時間の融通がきくレジャー客には魅力的だ。

 売り手には、在庫の販売に利用されており、特に飛行機座席、ホテル室などの有効期限が限られた商品を扱う業種には有効なチャネルである。

 Priceline.comでは、その後、自動車や住宅ローンもこの方式で販売を開始し、今では、レンタカーやスーパーの食料品なども取り扱っている。

  次に現れたの共同購入モデルMobshop(www.mobshop.com) (Accompanyから改名)やMercata (www.mercata.com)では、一定の商品に対しリアルタイムでできるだけの買い手を集め、提携業者から大口割引を得る。つまり、一定の商品の購入に興味があるユーザーは予め決められた購入サイクル時間内にオンラインで購入登録する。購入者の人数が増えるにつれてその商品の価格が下がっていくという仕組みだ。

 Mobshopでは、購入サイクルが終了するまで、結局いくらで購入できるのかが買い手にはわからないが、Mercataでは、ユーザーは最高購入価格を提示することができる(つまり、その価格に下がった場合のみ購入)。さらにMercataでは、参加人数に伴う価格の変化に合わせ、提示価格を変更することも可能だ。たとえば、もともと100ドルで登録しておいても、100ドルまで下がらないと思えば、150ドルに価格を変更できる。

 しかし、Priceline.comやMobshop, Mercataでは、買い手が利用業者や細かい条件を指定することができない。また、購入リクエストを送付する際に、クレジットカード番号を登録し、必ず購入しなければならない。どの航空会社やホテルを利用することになるのか、最終的にいくら支払うのかがわからず、支払を保証することに抵抗を感じる買い手も多い。

 その後、新たに登場した“逆ショッピング”サイトでは、1)買い手が具体的に自分の言葉でほしい商品をリクエストできる、2)複数の業者を比較して購入を決定できる、3)売り手にコンタクトしたからといって購入する義務は生じない、という点が異なっている。

 なかでも、まさに逆オークションといえるのがeWanted。昨年、立ち上がったこのサイトでは、買い手がほしいものを掲載し、売り手がそれに対しオファーを提供する。

 掲載商品は、アンティーク、自動車、書籍から航空券、ホテル、広告スペース、ドメインネーム、職まで、1000のカテゴリーおよびサブカテゴリーに、15万件のリクエストが掲載されている。毎日、新たに数千の購入リクエストが掲載され、そのうちの半分が少なくとも売りオファー1件を受け取るという。

 買い手は登録をする際に、「すべてのオファーを検討」「○○ドル未満のオファーはすべて検討」「○○ドル未満のオファーのうち最低価格オファーを検討」のいずれかを選択。1週間、1ヶ月など受付期間を自由に指定できる。売り手間の競争心をあおるためにオファー内容は公開されるが、オファーの内容を公開したくない場合は買い手しか閲覧できないプライベートオファーにすることも可能だ。

 サイト上に掲載されるのは売り手、買い手のユーザー名のみ。買い手、売り手間のやり取りは、サイト上の電子メールシステムを利用して匿名で行なう。売り手は買い手以外には匿名で、売り手の連絡先などの個人情報を閲覧できるのは買い手のみ。コンタクトしてきた売り手に返答するかどうかは、買い手次第だ。オファーの際には、商品の写真など画像をアップロードすることもできる。

 eWantedでは、eBayと同様、売り手や買い手の評価システムを導入している。eBayのフィードバックシステムでは、取引終了後、参加者が取引相手に関する評価を書き込み、その評価の点数によって、売り手は星印を得たり、点数が悪いと取引停止処分を受けたりする。eWantedでは、eBayなど他のサイトからの評価を移すこともでき、たとえば、eBayで売買の実績があり、高い評価を受けていれば、その評価をそのままeWantedに適用することができる。

 売り手は、個人だけでなく、ディーラーや再販業者なども含まれる。業者の場合は、希望のカテゴリーを登録しておくと、そのカテゴリーに新たなリクエストが掲載される度に、直ちにメールで通知される。

 eWantedでは、現在、集客のために無料でサービスを提供しているが、今後、売り手から販売手数料を徴収する予定だ。将来、発送やエスクロー(オンライン上の個人間の取引で「代金を払ったのに商品が届かない」「商品を送ったのに代金が支払われない」といったトラブルを避けるために、買い手が商品を受け取るまで買い手からの代金を預かり、取引が契約通りに行われるのを確かめるサービス。買い手は代金をエスクロー会社に送付し、エスクローは買い手が商品を点検、承認後、売り手に代金を送付する)、保険などのサービスを提供するにあたり、サービス提携業者からの手数料も検討している。広告収入も計画しているが、主要収入源としては考えていないという。

 eWantedでは、大オークションサイトのeBayを競合とは見なしていないという。「eBayは売り手フォーカス、価格上昇モデルであるのに対し、eWantedでは買い手フォーカスの価格下降モデルである」とクレイグ・パーマー代表は両社の違いを説明する。「アンティーク、収集品などの珍しい商品はオークション方式で価格が上昇するモデルが適切だが、どこにでもある一般の商品はオファーが増えると同時に価格が下がるべき」と言う。

 購入主導型モデルと呼ばれるものには、共同購入、逆ショッピングなどいろいろなモデルがあるが、「商品やサービスによりそれぞれ適したモデルがあり、ケースバイケースで消費者がどのモデルを利用するかを決めるようになる」とはパーマー代表の弁だ。

 電子製品など一定の商品向き共同購入モデルとは違い、eWantedではあらゆる商品を扱う。また、「Mercataなどは一定の販売業者が商品を供給するクローズド市場。eWantedがターゲットにしているのは、オープン市場」とも(パーマー代表)。

 同社では、今後、掲載カテゴリーを19のカテゴリーと93のサブカテゴリーに変更し、ナビゲーションを容易にする予定だ。海外への進出にも積極的で、すでに日本にパートナーがいる。年内には登録者数100万人を目指している。

 “リクエスト制ショッピングのeBay“を自称するRespond.comでも、買い手がほしいものを指定し、売り手がオファーを提供するというモデルを運営している。eWantedとの違いは、買い手のリクエストがサイト上で公開されず、関連登録業者に電子メールで送付されるという点だ。

 買い手は、購入リクエストフォームに「先日、TVショッピングで見たダイエット食品」「1950年代のコダックのインスタマチック8ミリ映画プロジェクタ」というように探しているものを具体的に自分の言葉で記入できる。「DVDプレーヤーを○○ドル以下で」と価格を指定することも可能である。

  リクエストはそのカテゴリーに登録している販売業者に匿名で転送され、その商品・サービスの提供に興味のある業者は、Respond.comのメールシステムを通じて、買い手にオファー内容と連絡方法を返信する。業者にコンタクトするかどうかは買い手次第である。売り手は買い手の連絡先を知らないので、買い手に直接コンタクトすることはできない。

 Respond.comでは、当初、収集品を中心としていたが、現在は、収集品のほか、衣服、自動車部品、書籍、コンピューター、旅行など3000以上の商品・サービスのカテゴリーが設けられている。

 こうした売買サイトの場合、売り手と買い手の両方を集めるのがもちろん重要だが、どちらに焦点をあてるかが問題だ。買い手による掲載を中心に構築しているeWantedと違い、Respond.comでは売り手の構築から始めた。「売り手がたくさんのリクエストを得るよりも、買い手が売り手から十分な回答を得られることを優先した」とウィル・クレメンズ代表は語る。

 登録業者には1日に20000〜25000のセールスリード(見込客)をメールで送付する。売り手にとってのメリットは、最小限の投資で効率よく見込客を得られる点だ。売り手に送られるのは登録したカテゴリーに関するリクエストのみで、まったく関係のないリクエストが送られることはない。

 「買い手は冷やかし客ではなく、すでに買いたいものがわかっている人たち。すこし助けが必要なだけ」と、クレメンズ代表は買い手の購入意志の高さを強調する。

 売り手に必要なのはインターネットアクセスと電子メールアドレスのみで、ウエブサイトは必要ない。Respond.comの売り手にはオフラインのスモールビジネスも多く、7万以上の登録業者のうち15%はウエブサイトを持っていないという。

 買い手からのリクエストに返答するかどうかは、やはり売り手次第である。売り手が対応できない問い合わせを他の業者に転送し、他の業者がRespond.comに登録すれば、トラベラーズチェックを贈呈するという紹介プログラムも導入している。

 「他の“逆ショッピングサイト”は、どこにでもある一般商品を安価で提供している。Respond.comでは価格は二の次。大事なのは買い手の問題を解決すること」とクレメンズ代表はパーソナルタッチを強調する。

 各カテゴリーの中でこのモデルに適する商品と適さない商品があるという。たとえば、計画する上で助けが必要な旅行は同社のモデルに適しており、オンライン旅行市場のかなりのシェアを得ると予測している。デジタルカメラなどはオンラインで販売しているところが多く、価格が大きな購入決定要因となるが、今のところ、商品選択にあたって助けを必要とする買い手が多く、人気の高いカテゴリーであるという。

 Respond.comでは、3月末まで無料でサービスを提供。最近、売り手から掲載料を徴収しはじめたところで、料金は、販売価格、利益率、アクセス数などをもとにカテゴリーによって異なるが、一般に月に10〜100ドルだ。

 Respond.comでは、販売手数料や広告収入を得る予定はなく、掲載料に専念する計画だ。 Respond.comの最大の競合は、他の“逆ショッピングサイト”ではなく、電話帳のイエローページだという。販売業者のオフラインの広告予算を食っているからだ。「今後5年間で、イエローページを追い抜き、販売業者にとって最大の宣伝媒体となること、電子メールのようにごく普通の媒体となること」を目指している。

 どのサイトも、まだ設立から日が浅く、集客のために無料サービスを提供しており、課金後も集客を続けられるかどうか、そのビジネスモデルの有効性は実証されていない。“逆ショッピングサイト”のひとつとされてきたNexTagは、つい先日、ビジネスモデルを変更したところだ。購入主導型モデルの有効性が示され、定着するかどうかは、今後が楽しみである。

 
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