自由化を迫られる米国公益事業--電子ネットワーク化が鍵 |
アメリカでは、電気、ガスなどの公益事業の自由化が進められており、今年3月から、消費者が電力会社を選べるようになりました。つまり、南カリフォルニアに住んでいても、他州の電力会社から電力を買えるようになったのです。そこで、これまでには見られなかった、電力会社による宣伝、顧客勧誘合戦が開始されています。
私も、早速、地元の電力会社からバージニア州にある小さな風力、水力、地熱を使ったエコ電力会社(http://www.choosewisely.com)に変更しました。今までの電力会社を使っていれば、電気料金が10%値下げされるのですが、私のような小口利用者にとっては微々たる額です。それよりも、少しでもクリーンなエネルギーの利用、環境保護に貢献したいと思いますが、そうした考えの消費者は多いと思われます。
商品を差別化できないコモディティであったはずの電力ですが、競争原理の取り入れられた電力市場では、「クリーンなエネルギー」ということで差別化も図れるわけです。
電力業界の自由化は、95年に、まず卸売レベルで始まりました。電力業界自由化の一環として、市場競争を促進するために、連邦政府が電力会社にオープンで公平な電力の供給を義務づけたのです。電力会社、電力販売会社、独立系発電会社などが集まり、電力の卸販売業者・購入者間で送電サービスに平等なアクセス、および電子ネットワーク上での送電情報へのアクセスを提供するために、OASIS(Open Access Same-time Information System)の開発・導入を推進しました。
電力業界は、もともと一社が発電から送電、供給販売までを行う垂直統合型でしたが、自由化により水平型への移行を余儀なくされました。(ただし、自由化されたのは発電部分のみで、送電・流通部分は、独占のままです。)
オープンアクセス環境における新しいメカニズムとしてISO(Independent System Operator)が生まれ、送電システムをコントロール・運営、送電をスケジュールし、需要に応じた電力の供給や送電標準が満たされていることを確認するという役割を果たしています。
現在、電力供給業者175社と顧客348社がOASISを利用しており、各地域の電力供給会社のハブとして機能するノードが、全米に22あります。 OASISへの参加を義務づけられているアメリカの公益電力会社以外にも、カナダの電力会社、州・自治体などの連邦政府管轄外の電力会社もOASISに参加しています。供給側は、送電可能能力、送電および補助サービスのオファー、価格および条件を掲示し、顧客は送電の予約や補助サービスの購入、こうしたサービスの再販を行います。
たとえば、南西部の供給業者が集まったSWOASISでは、10業者が情報を掲示しており、(卸)顧客が各業者の送電可能な電力と価格を比較し、送電予約リクエストを送付すると、送電施設のコントロールセンターが確認票を返送します。
電力供給というのは、本質的には情報ビジネスであり、情報というのはリアルタイムのコモディティなので、自由化には電子ネットワーク化が不可欠とされました。プライベートネットワークの利用も検討されましたが、結局、アクセスの容易さとコストの面でインターネットが採用されました。連邦政府によってOASIS構築の通達が出されたのは、95年7月。97年1月までに商業運転が義務づけられ、電力業界は、1年半で、この大プロジェクトをこなさなければならなかったわけですが、「インターネットがなければ、それは不可能であっただろう」とプロジェクト担当者も語っています。
連邦政府の計算によると、自由化による競争によって、消費者は年間38億〜54億ドルの電気料金を節約できるそうです。その他、発電所と送電会社の間でオープンなコミュニケーション、取引の迅速化、送電システムの操業効率向上、電力資源の最大利用などのメリットがあります。
しかし、OASISの開発導入コストは、電力供給業者が負担しており(結局はユーザが負担することになりますが)、「できたらやりたくない」「いつまでも“独占”というぬるま湯につかっていたい」というのが電力業界の本音です。
OASISを最低限度の法を順守するためのシステムでなく、オープンアクセス促進のための最高のツールとし、真に商業的に成長させる検討もされています。そのためには、顧客のニーズや市場プロセスを反映したものでなければならず、より以上の投資が必要ですが、コスト回収が可能かどうかが不明であり、現在のところ、供給側にとって、それだけのインセンティブがありません。複雑な電力業界構造および自由化への変遷を考えると、本当にやるだけの価値があるのか、長期的に供給側にはメリットはないという見方が供給側、顧客側ともにあります。
カリフォルニア州では、ガス市場の自由化も始まっており、これまで流通会社が供給会社を選んできましたが、これからは顧客が供給会社を選べるようになりました。Southern California Gas Co. (南カリフォルニアガス会社)は、Energy Marketplace(http://www.energymarketplace.com)というウエブサイトを開設しており、複数のガス会社が入札し、消費者が供給会社を選べるようになっています。 しかし、これは、これまで地元の顧客しか得られなかった供給会社が、別の地域の新規顧客を開拓するための低コストのツールとしても使えるわけです。たとえば、天然ガス会社は、従来、新規顧客を獲得するために広告宣伝および営業に200〜300ドルを費やしていましたが、インターネットを使うと、これが10〜30ドルに減少すると言われています。また、顧客のニーズや利用パターンなど顧客情報の収集にも役に立ちます。さらに、同サイトを運営するSouthern California Gas Co.は、同サイトを利用する他のガス会社から毎月利用料金を徴収しており、新たな収入源となっています。
厳しい試練を与えられた公益会社ですが、一旦、押し寄せた自由化の波には逆行できません。自由化によって生き残れないところは淘汰されつつあり、合併吸収など業界再編成がすでに起こっています。電力業界、ガス業界の“パンナム”となり果てたくなければ、いち早く手を打って競争力をつけるしかないのですが、それにはインターネットの活用が大きな鍵となっていると言えそうです。
有元美津世 Copyright GlobalLINK
科学技術と経済の会 JATESニュースレター92号 98年4月8日掲載
Revised 5/1/98 web2@getglobal.com