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今年に入って、以前仕事で関わっていた通信関連のベンチャー企業に勤めていたエンジニア3人から立て続けに相談を受けた。
そのベンチャー企業はIPOをする予定だったのだが、ずさんな経理態勢のために全米証券委員会にIPOの申請を却下されたらしいのだ。そのため、社員が次々に辞めていっている。
チャックは「会社を辞めることにしたが、独立するか、転職するか迷っている」といって相談に来た。つい先日は、エンジニア部門の長だったハリーからも電話がかかってきた。とうとう会社がつぶれてしまったらしいのだ。彼も独立するか、転職するかを迷っている。
二人とも、私がよい出資先でも紹介してくれるのではないかと当てにしているのだった。皆、連れあいは働いておらず、子供はいるし、住宅ローンは抱えているし、独立にはかなり慎重のようだった。
私は、彼らがIPOを夢見て、どれだけ厳しいスケジュールで仕事をしてきたかを知っている。その会社は夜10時でも社員がたくさん働いていて、寝泊りできるように布団も置いてあった。一日中会社で働く人のために三食とも会社が支給していた。週末出勤などあたりまえだ。
バブル期には大企業からの出資や買収の申し出もたくさんあったのだが、IPOを目指していたのですべて断った。今は皆、それを悔やんでいる。特にハリーはかなりのストックオプションを持っていた。どれだけ残念なことだろう。
同社を一足先に解雇されたサムは、在職中からかなり不満を持っていたので、別のベンチャー企業に転職した後は声もはずみ、仕事は大変だが楽しいといっていた。(彼の勤める会社には、先の会社のCFOの履歴書が回ってきたという。)
しかし、先日、電話がかかってきたときには、彼の声はまた沈んでいた。転職先の業績もあまり芳しくないらしい。「また転職したいので、出張から帰ってきたら電話をするから仕事を探しておいてくれ」という。
私は就職カウンセラーでも就職斡旋業者でもない。それなのに、一時は業界の先端を走る企業に勤めていた彼らが、7年も変わらずにスモールビジネスを営む私に相談に来るとは・・・。経済の変化を感じずにはいられない。
有元美津世/東京新聞・中日新聞「e-net −アメリカ便り」2001年6月掲載
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