インターネットでの切手販売 |
アメリカでは、今年、インターネットでの切手購入が実現する。現在、米国郵政公社の認可を受け、ベータテストが進められている電子切手は、ユーザがインターネットで切手をダウンロードし、レーザープリンターやインクジェットプリンターを使って直接封筒に印刷するというものだ。印刷される2Dのバーコードには、差出人住所、宛先、送料、印刷日時、利用ソフトなどの情報およびセキュリティ情報がデジタル化されている。2つと同じコードはないため、印刷したものをコピーして不正利用することは不可能だ。
米国郵政公社では、95年にPCベースの切手、正式名称「情報ベース証印(IBI)プログラム」を開始した。現在、多くの企業で利用されているメーリングマシーンは、手が加えやすく、年間1億ドルにものぼる不正利用による損失を削減するのがプログラムの目的だ。メーリングマシーンが郵政公社の認可を受けたのが1920年であるから、78年ぶりの革新である。
電子切手市場は、99年100万ドル、2000年1.27億ドル、2003年には19億ドルに成長すると予測されており、この市場をめぐり、ベンダー間ではすでに激しい競争が繰り広げられている。最初に郵政公社の認可を受けたE-Stampは、すでに9ヶ月にわたるベータテストの第2フェーズに入っている。同社のシステムは、CD-ROMとPCのパラレルポートに取り付けるハードを利用したもので、インターネットでまとめてダウンロードした切手は、このハードに保存される。同社は、マイクロソフトやコンパックなどから出資を受けており、コンパックのコンピューターにはすでに同社のソフトがバンドルされている。フランス系国際メーリングマシーンメーカーのネオポストも、同様のシステム、PC Stampを開発し、ベータテスト中である。
元々、郵政公社指定の仕様では、切手情報を保存するハードを必要としていたが、その仕様に対し、Stamps.com(元StampMaster)では、ハードを必要としないソフトだけのサーバベースのソリューションを提案した。郵政公社では、これを受け、97年、認可プロセスを開始。98年8月にベータテストが認可され、現在、ワシントンDCとサンフランシスコでベータテストが行なわれている。テストが完了後、99年初期に全米での展開を予定している。
Stamps.comでは、ソフトを無料で提供し、購入切手額に応じた手数料を徴収する。手数料は約10%になる見込みで、初期設定費などは一切ない。現在、メーリングマシーンや切手再販業者では17-25%の手数料を徴収しており、それに比べて割安となる。 同社のソフトは、マイクロソフトのワードやアウトルックなどにも統合され、ワード文書から住所を自動的に印刷ダイアログに抽出することができる。送料の計算もオンラインででき、支払はクレジットカードや口座引き落しによる。同社では、切手以外にも、便箋、封筒、宛名ラベル、プリンター、秤などをオンラインで販売する予定だ。
Stamp.comの場合、切手情報は同社のサーバに保存されるため、ユーザは特別のハードを購入する必要がないだけでなく、オンラインで自動的に情報をアップデートでき、郵送料が変更した場合でも、一夜のうちにサーバ上で変更が可能であるというメリットがある。各コンピューターにハードを取り付ける他社のやり方では、コンピューターごとに変更を実施しなければならない。ただし、セキュリティという意味では、各PCに取りつけられたハードに切手情報を保存する他社の製品の方が勝っているだろう。大量ユーザーにはオフラインで印刷でき、よりセキュアなハードのソリューションが好まれ、小規模ユーザにはオンラインで購入でき、使用分だけその都度料金を支払えばよいサーバベースのソリューションが人気があるようだ。
Stamps.comは、96年、UCLAのMBAの学生3人によって創立された。就職活動中、履歴書を送る際に手元に切手がなく、コンピューターで印刷できないものかと思ったのが起業のきっかけとなった。自己資金で立ち上げ、6ヶ月後、南カリフォルニア最大のベンチャーキャピタリスト3社から600万ドルの出資を受けた。製品開発に1年半を費やし、郵政公社の認可プロセスにさらに1年半を要した。
同社のシステムが郵政公社の認可を受けた後、競合他社が次々にブラウザーベースの製品開発を発表した。ネオポストのPostage Plus、E-StampのE-Stamp Onlineともに、郵政公社の認可申請中である。140万台のメーリングマシーンで41億ドルの売上をあげている老舗のピットニーボウも、市場シェア攻防のために電子切手市場に参入。ClickStampを開発したが、やはり郵政公社の認可申請中である。同社は、昨年後半、80年代初期に電子メーターサービスもカバーする特許を15件取得していたことを公表した。しかし、E-StampやStamp.comでは、「電子切手市場参入に後れを取った時代遅れの企業の時間稼ぎ作戦」とし、特許ライセンス料請求には応じない姿勢である。
E-Stamp、Stamp.comともすでにAOLと提携しており、Stamp.comでは、独占契約でソフトをAOLスタートアップCD-ROMにバンドル、また99年初期に開始予定のAOLの切手サービスセンターやコンピューティングチャネルのソフトダウンロードセンターでもソフトを提供する。
各社とも、まずは120億ドルといわれるスモールビジネス市場を狙っており、Stamp.comでは、全米に4000万以上存在するといわれるSOHO市場をターゲットにしている。ベータテストも月に30〜500の郵便物を発送し、メーリングマシーンを利用しておらず、インターネットアクセスがあるSOHOが対象だ。メーリングマシーンのレンタル料は、月に数十ドルかかるため、メーリングマシーンを使っているSOHOは全体の28%にすぎない。
同社では、この5年で500万〜1000万の利用者獲得を目標としている。 各社とも、企業市場も狙っており、SDK(Software Development Kit)やAPIを通じ、企業のITへの統合やイントラネットソリューションを提供していく構えだ。
電子切手は、今のところ、国内郵便に限られ、国際郵便には利用できない。しかし、各国の郵政管轄局による国際郵政コンソーシアムでは電子切手の利用が話し合われているそうだ。また、米国郵政公社では、海外の郵政管轄局からインターンを受け入れるインターンシップ制度を設けており、これを通じ、各国に電子切手のコンセプトを広める考えだ。
Stamps.comでも、各国政府、またはシステムインテグレータとの提携により、すでにヨーロッパ、アジアへの進出を検討している。
有元美津世 Copyright GlobalLINK 1999年
(社)科学技術と経済の会 『技術と経済』2月号掲載
Revised 3/5/99 web2@getglobal.com