米国インターネットビジネス事情


 インターネット上での取引額総額は、今年、150億ドル(i)に達し、2001年までには2200億ドル(ii)に達すると予測されています。しかし、オンライン決済ができる消費者向けサイトは全体のわずか9%であり(iii)、消費者を対象にした調査では、約半数が購入を決定するためにインターネットを使用したが、実際にオンラインで購入をしたのは15%という結果が出ています。(iv)確かに利益をあげているオンラインビジネスは非常に少なく、新しいサイトの6割が失敗に終わるとも言われています。v しかし、ほとんどのオンラインビジネスが95〜96年の間に始まっており、現在、どの会社もインフラ整備やマーケティングに投資中です。たとえば、以前ご紹介したAuto-by-Telは、昨年、利益を出しましたが、再投資をしており、Amazon.comもIPOで集めた資金を大々的にマーケティングに費やし、当分の間は利益を出すつもりはないと宣言しています。


主な傾向


<広告収入への依存>
 現在、多くのサイトにとって広告収入が主要収入源であり、この傾向は2000年まで続くと見られていますが、どのサイトも収入源の多様化に努めており、ほとんどのサイトが広告、会費・購読料、製品販売、ライセンスなど複数の収入源を得ています。
 課金システムが受け入れられるのは、金融・投資情報などプレミアムの情報を提供する限られたサービスのみと考えられており、会員数5万人で非常に人気のあるESPNのSportsZoneも広告収入に依存、「もし購読課金に成功するサイトがあるとすればここしかない」と言われていたウォールストリートジャーナル紙も、有料購読者数が10万人に伸びたものの、まだ利益をあげていません。課金が唯一受け入れられるだろうと思われていたオンラインゲームですら、期待を裏切る成果に終わっており、ゲームサイトも、将来は広告収入に頼らざるを得ないと言われています。
 消費者への課金をあきらめたサイトには、コンテントや自社のサイトで蓄積した技術・ノウハウを他のサイトにラインセンスするところが増えています。世界のゴルフ情報が満載のGolfWebはゴルフ情報をWebTVやパーソナライズドニュースサービスに、MapQuestはオンライン地図を様々な業種に、Zip2はローカル情報サイト技術を新聞サイトに、Internet Travel Networkでは旅行予約システムを旅行エージェント、企業(イントラネット向け)、他の旅行サイトにライセンスしています。

<パーソナリゼーション/ローカリゼーション>
多くのサイトが利益をあげられない一因には、ネット上では膨大な量の情報が断片化して存在しており、ユーザーがほしい情報を迅速に見つけられないという点があります。それを解決するために、インテリジェントエージェントやプッシュテクノロジーを用いたパーソナリゼーションと、地域や市ごとのホワイトページ、イエローページ、シティガイドなどの登場に見られるようにローカリゼーションが進んでいます。

<戦略的提携>
ハイプロフィールのサイト間の共同ブランディング、共同プロモーションなどの提携が急速に進んでおり、価値の高いサイトでのスペースを恒久的に確保するために、サイト間で独占契約が次々と交わされています。
Amazon.comとYahoo!, Excite, AOL.com、OnsaleとNetBuyer, Netscape Guide by Yahoo!, Excite Shopping Channel、Auto-By-TelとGeoCities、ExciteとPreview Travelなどがあります。

<サーチエンジンのオンラインサービス化>
 サーチエンジンが有名コンテントサイトと次々と組んでいるのは、単なる通過点ではなく目的地へ、コンテントアグリゲーター(集める者)だけでなくコマースアグリゲーターへの脱皮、つまりAOLのような総合オンラインサービス化を目指しているためです。各サーチエンジンでは、My Yahooなどのパーソナライズド情報サービス、Excite Shopping Channelなどのショッピングガイド、ローカル情報、金融情報、旅行予約サービスまで提供するに至っています。

<仲介業の躍進>
 インターネットにより製造者と消費者が直接結びつけられ、中間業者は淘汰されるのではないかという懸念とは裏腹に、自動車、旅行、保険、不動産などの分野で売主と買主を結びつける仲介サイトが伸びています。昨年、ネットを通じて販売された自動車の割合は1.5%ですが、2001年までに25%に達するとクライスラーでは予測しています。(Auto-by-Telの社長のピート・エリス氏が、今月末、幕張メッセで開かれるデジタルメディアワールドで講演される予定です。)

<オークション販売の増加>
 コンピューター製品のオークションサイト、OnSaleの成功は有名ですが、コンピューター以外にも様々な製品をオークションで販売するサイトが増えています。たとえば、消費者が不要品を販売することもできるeBayでは、書籍雑誌から切手や骨董品まで売買しています。また、信用取引もできる、業者対象の海産物オークションサイトも登場しています。

<企業間取引の増加>
企業間取引が急増しており、特にコスト削減、注文処理の時間削減、情報流通の向上を目的としたエクストラネットの増加が顕著です。97年の企業間取引は、昨年比1,000%増の80億ドル、2002年までに3,270億ドルに達すると見られています。ivi


分野別動向


 現在、オンラインビジネスで一番利益を上げているのは証券売買であり、96年に顧客ベースで50%成長し、顧客数は150万人にのぼりました。vii また、ローカルの小さな小売店やレストランなどで、インターネットを通じ、海外に顧客を獲得し、売上を伸ばしているところは多くあります。旅行サービスも売上を伸ばしてはいますが、航空会社のコミッションの削減、ビジター対予約率の低さなどもあり、まだ利益を出しているサイトはありません。

<消費者製品>
 売れているのは、コンピューターや電子製品、書籍や音楽関連製品などの大衆商品、花などのギフト商品です。書籍市場は、既存の大手書店や出版社が次々とオンラインに進出をしており、特に最大の英語出版社、Simon & Schusterのオンライン進出は価格に影響を与えると見られ、価格競争を始め、激烈な競争が始まっています。市場シェア獲得のために、サーチエンジンや有名サイトとの提携が相次いでおり、BarnesandNoble.comは、AOLと組み、AOL上の唯一の書店となった他、CNN Interactive,ESPN SportsZone, Lycos,Time,ZDNetなどと独占契約を交わしました。Amazon.comも応戦し、YahooやExciteなどのサーチエンジン、Aol.comやProdigy Shopping Networkと独占契約を交わしています。

<金融・証券>
 オンライン取引によるコミッション高は、今年、6.28億ドル、2001年には220億ドルに伸び、現在、ディスカント仲介の3割を占めるオンライン売買は、2001年までに6割に達すると見られています。viii オンラインブローカーには、手数料一件につき9ドルというところもあり、安くても39ドルという電話注に比べ、かなり低料金である点、ブローカーを通さず自分で売買のコントロールができる点が受けています。

<保険>
 オンラインでの保険売上は、2001年までに11億ドルを超えると見られており、特に自動車保険の伸びが著しく、同年にはオンライン売上が8.5億ドル、自動車保険全体の7.5%に達すると予測されています。ix  現在、オンライン販売を行なっていない保険会社の多くは、新しい顧客のほとんどをエージェントから得るため、エージェントを疎外することを懸念しているからですが、保険会社を対象にした調査では、多くの保険会社が5年以内に簡単な保険の購入はオンラインで行われると予測しており、保険営業員の数は14%低下すると見られています。

<旅行>
 97年のオンライン収入は8.27億ドル、2000年には45億ドルに達すると予測されています。x 44%のサイトが81%の売上をあげており、今後、寡占状態は強まると見られています。マイクロソフトやTravelocity(SABRE)などの大手と並んで、Preview TravelやInternet Travel Networkも健闘していますが、スタートアップが主要プレーヤーになる時期は過ぎ、結局は、オフラインの旅行業界と同じ業界図が描かれると見られています。小さなビジネスが生き残るには、ホテル予約コンピューターシステム(GDS)に加入していない中小・独立系のホテル向け予約サービス、WorldResのようにニッチ市場を狙う必要があるでしょう。

<新聞・雑誌>
 2001年までにプレミアムサービスの購読料は、オンライン収入全体の6%、残りは広告に依存すると予測されています。xi プレミアムサービスに対し課金するサイトは増えていますが、購読料を徴収しても、製作・流通コストをカバーするだけと言われています。

<ローカル情報>
 消費者の多くが時間と金銭の95%を自宅の10〜15マイル以内で消費し、アメリカ人の51%がインターネットを使ってニュース、エンタテーメント、スポーツなどのローカル情報にアクセスすると言われています。 また、98年の終わりまでに計4,800万人のインターネットユーザーの半数の2,400万人がローカルコンテントにアクセスし、ローカル情報提供サイトの収入は2000年までに総額5億ドルに達すると見られています。xii
 2000年までに4.4億ドルになるというオンラインのクラシファイドアド市場、4.8億ドルになるというスモールビジネスのウエブホスティング市場をめぐりxiii、CitySearch、マイクロソフトのSidewalk、AOLのDigital City、US WestのDiveInの間でし烈な戦いが起こっています。

<コミュニティ>
  会員100万人、ハリウッド(映画)、ヨセミテ(アウトドア)といった38のテーマコミュニティ上で会員にホームページ掲載を無料で提供するGeoCitiesと、ゼネレーションX(18〜34才)のコミュニティを築いたTripodは、トラフィック数で常に上位にランキングし、広告収入を稼いでいます。また、50代以上のベビーブム世代をターゲットとしたThird Ageや子育て情報サイトParent Soupなどターゲットを絞ったコミュニティサイトが次々に登場しています。

<音楽>
 96年、オンラインの音楽売上は1,800万ドルにのぼりましたが、業界全体の利益は20万ドルに留まり、利益を出している会社はほとんどありません。xiv(ちなみに同年のAmazon.comの売上が1570万ドル。)日本語サイトもあるN2K(Music Boulevard)は、CD品質シングルのダウンロード販売を開始し、キャピトルも、レコード会社として初めて、アルバム発売前のプロモーションとしてウエブ上でのシングルリリースを開始しました。

i Infoworld 97年9月8日号(IDC, Forrester, Jupiter, Cowles/Simbaの数字を一つにまとめたもの)
ii IDC
iii Forrester
iv CommerceNet/Nielsen Media
v Forrester vi Forrester vii Money, "How to avoid online brokers snafus and invest for as little as $9 a trade" 97年10月号
viii Piper Jaffery ix Forrester x Jupitor Communications
xi Forrester
xii Find/SVP
xiii Forrester
xiv Forrester


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