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「電脳人」


−苦難のIT業界−


 
 経済指標が一部上向きを見せているアメリカでは、「職なき景気回復」という表現が使われている。
失業率は依然、高いままだからだ。

 とくにIT業界の事情は厳しい。
今年になって、ここ南カリフォルニアで行われたIT業界の就職セミナーに出席した際、コンピューター業界20年、30年というベテランたちが、「こんな状況は初めてだ」と口をそろえて語っていた。1年以上もの間、職を探している人たちが大勢いるのだ。業界30年のベテランは、企業に面接に行く度にその企業向けの販売計画を作ってプレゼンするが、それでも仕事が見つからないという。[削除候補] 運よく再就職できても、給料は以前の半分という人はザラにいる(以前がもらいすぎだったのだが)。

 シリコンバレーやシアトル、ボストンなどITへの依存度が高かった地域では、状況はさらに厳しい。 IT業界では、バブル崩壊後、職の絶対数が減っているだけでなく、コスト削減策として、インドなど賃金の安い国に仕事をアウトソースする企業が増えていることも大きな要因だ。

 IT職の受難は不景気のせいだけではない。IT分野が成熟するにつれ、コストは二の次で最先端の技術を導入するといった姿勢から、どれだけ事業、収益に役立つのかといったビジネスの視点が求められるようになっている。ITの成功が、技術力ではなくビジネス効果で測られるようになったのだ。たとえ景気が回復しても、以前のようなIT消費は見込めないというのが大方の予測である。

 あるアンケート調査では、IT職に就く7割以上のアメリカ人が「ITキャリアは有望ではない」と答えている。自分の子供や若い人たちには「IT業界には進まないように」と説くIT業界者らもいる。現にコンピューター分野を専攻する大学生の数は減っている。

  つい数年前までの花形職業が、今では口に出すのもはばかれるようになってしまった…

有元美津世/東京新聞・中日新聞「電脳人」2003年5月掲載 
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